首相、「敵基地攻撃」改称検討で公明に秋波

衆院予算委員会で答弁する岸田文雄首相=18日午後、衆院第1委員室(春名中撮影)
衆院予算委員会で答弁する岸田文雄首相=18日午後、衆院第1委員室(春名中撮影)

岸田文雄首相が18日、「敵基地攻撃能力」の名称見直しに初めて言及した。連立政権を組む公明党には名称に異議を唱える声が強く、これに応える形で秋波を送った。政府は年末に改定する「国家安全保障戦略」に能力保有を明記する方針だが、具体的に保有する装備や運用の検討に加え、名称をめぐり公明の理解を得られるかが今後の焦点となる。

首相は18日の衆院予算委員会で「いわゆる敵基地攻撃能力という名称について、さまざまな議論があることは承知をしている」と述べ、改称を検討する考えを示した。

首相が「敵基地攻撃能力」との表現を初めて使ったのは、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した昨年10月19日だった。それまでは「効果的措置を含むミサイル防衛能力」「相手領域内で弾道ミサイルなどを阻止する能力」といった説明をしてきたが、「分かるようで分からない」との首相の判断から、使用を始めた。

ただ、北朝鮮や中国の弾道ミサイルは発射台付き車両(TEL)でも運用されており、ピンポイントで敵基地を攻撃することは難しくなっている。岩屋毅元防衛相が18日の予算委で「リアリティーをなくしてきている」と語ったように、自民党内でも呼称への疑問の声が上がっている。

公明の拒否感はさらに強い。同党の安全保障政策を担う北側一雄副代表は1月27日の記者会見で「もっと違った表現にしてもらいたい。言葉として『敵基地』も『攻撃』もふさわしくない」と注文を付けた。山口那津男代表に至っては「古い議論の立て方」と露骨に嫌悪感を示していた。公明が保有に反発し続ければ、年末までの国家安保戦略の改定に間に合わない可能性も生じる。

とはいえ、公明は敵基地攻撃能力を「違憲」と根本的に否定する野党とは一線を画し、抑止力強化の必要性は認めている。北側氏の発言も裏を返せば、名称を変えれば協議することは可能とも読み取れる。自民中堅は「本格的に自公で議論するのは夏の参院選後だろうが、今回の首相の発言が布石になる可能性がある」とみる。

自民内では名称について「打撃力」「反撃力」といった案が上がり、佐藤正久外交部会長は「自衛反撃能力」を提案する。「反撃」とすることで公明が危惧する先制攻撃との誤解を避け、「自衛」を掲げることで反撃の範囲も必要最小限度であること示す。ただ、この場合は肝心の抑止力が薄れる側面も持ち、今後与党内の協議で課題となりそうだ。(石鍋圭)

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