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鈴木誠也のメジャー移籍先、パドレス最有力も4球団から選択 植村徹也

移籍先のメジャーとして4球団が有力視されている鈴木誠也
移籍先のメジャーとして4球団が有力視されている鈴木誠也

広島からポスティングシステムを利用して米大リーグに挑戦する鈴木誠也外野手(27)の移籍先としてサンディエゴ・パドレスが最有力候補に浮上。シアトル・マリナーズ、ニューヨーク・メッツ、サンフランシスコ・ジャイアンツが選択肢の中に残り、最終局面で4球団に絞られていることが明らかになった。移籍先決定のXデーは大リーグ機構(MLB)と選手会による新労使協定がまとまり、契約交渉が解禁された後となるため、現在の労使交渉の状況から見れば3月2~3日あたりが濃厚だ。

鈴木の新天地候補がパドレス、マリナーズなど4球団に絞られた背景には現在の大リーグの厳しい状況がある。MLBと選手会は5年に1度改定される労使協定について妥結せず、昨年12月2日(米国時間)にロックアウトに突入。FAやトレードを含む市場が凍結された。昨年11月21日、メジャー30球団にポスティング公示された鈴木の移籍交渉も表面的には一時停止され、新協定合意と同時に交渉が再開される。30日間の交渉期限の残り約20日間で移籍先を決める流れだ。

注目の労使交渉だが、スタート時点では40項目を超えていた争点も、現在は3~4項目に絞られた。しかし、12日に行われた機構側と選手会の交渉はまたしても決裂。機構は年俸総額が上限を超えた球団に対する課徴金の規定額を段階的に2億2200万ドル(約255億円)まで引き上げると譲歩したが、選手会とは隔たりがあり、メジャー最低年俸額も合意に至らず。2月上旬に妥結し、16日に予定通りキャンプイン…という観測の流れた時期もあったものの、今回の交渉決裂で新協定合意の時期は2月下旬以降にズレ込む。

こうした状況は、初めてメジャーの世界に飛び込む鈴木にとっては、想像以上に厳しい事態だ。仮に「3月31日のシーズン開幕→162試合実施」の事実上のデッドラインとなる3月1日に妥結しても、春季キャンプはほとんどできない。12日前後から15試合前後のオープン戦に出場して、さあ本番…。慣れない環境、手元で鋭く変化するメジャーの投球への対応など、まさに手探り状態の〝ぶっつけ本番〟となる。

逆のケースを考えれば過酷さが分かる。昨季、新型コロナウイルス対策でキャンプ期間中に入国できず、わずかな調整期間で公式戦に臨んだ巨人や阪神の新外国人選手は軒並み力を出し切れなかった。

パドレスやマリナーズが最終候補に残った理由は、鈴木や代理人のジョエル・ウルフ氏が状況の厳しさを認識していることの裏返しだ。パドレスにはメジャー11年目のダルビッシュ有投手(35)が在籍。また、マリナーズにはイチロー会長付特別補佐兼インストラクター(48)という絶大なる存在が…。鈴木にとっては日本人メジャーリーガーのレジェンドが同じ球団にいる意味は大きい。初めて経験するメジャーの世界で、遭遇するさまざまな悩み、技術的な壁に対する全ての答えをレジェンドが解消してくれる可能性があるからだ。周囲の外圧に対する壁にもなってくれる。

メッツはコーエンオーナーが金満で知られ、鈴木に巨額契約(年俸17億円×4年=総額68億円と推測)を提示しているようだ。同じニューヨークを本拠地とするヤンキースよりもメディア・テンションが低く、華やかな住環境が魅力。愛理夫人と暮らすには魅力的な街だ。メッツもジャイアンツも、パドレス、マリナーズも外野陣は埋まっていない。4球団ともに地区シリーズ、ワールドシリーズ出場の可能性はあり、鈴木が打撃不振に陥っても我慢して起用してもらえそうな戦力構成といえる。

「レギュラー保障」は鈴木の新天地決定の重要なポイント。パドレスを最有力に最後の最後まで針の先がどこを向くのかは極めて微妙な状況だ。3月3日あたりといえば、まさに「ひな祭り」の時期。桃の花が咲く春爛漫(らんまん)の季節に誠也の新天地は決まる。(特別記者)

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