露「ウクライナ侵攻せず」 米国に再回答、対話は継続

ロシア国旗(ロイター)
ロシア国旗(ロイター)

【モスクワ=小野田雄一】ウクライナ情勢をめぐり、ロシア外務省は17日、北大西洋条約機構(NATO)の東方不拡大の確約などを柱とするロシアの要求を拒否した米国への再回答文書を米国側に交付し、公表した。文書は「ロシアはウクライナに侵攻せず、計画もない」とする一方、要求が拒否されれば「軍事技術的な措置」を取ると改めて警告。ただ、一部の議題では交渉が可能だとした。

ロシアはウクライナ国境などに展開する部隊の一部撤収を発表する一方、相互安全保障に関して米欧と対話を続ける方針を示している。今回の文書公表にも対話への意思を示す思惑があるとみられる。ただ、米欧はロシアのウクライナ侵攻の恐れは依然として高いとみており、本格的な緊張緩和が進むかどうかは不透明だ。

文書は「米国はロシアの要求の本質的要素について建設的に回答しなかった」と指摘。具体的には、NATO不拡大の確約や東欧などからのNATO軍備の撤収などを挙げた。ウクライナがNATOに加盟すれば南部クリミア半島(ロシアが2014年に併合)の武力奪還を試み、ロシアとNATOの戦争が起きる脅威を生む-とも主張した。

また、ロシア軍は自国内で活動しており、ウクライナ周辺からの軍備撤収といった米国の要求は受け入れられないと指摘。露国境付近でのNATOの活動がロシアの主権を脅かしているとも改めて主張した。

他方で文書は、米国側が、国境付近での爆撃機の飛行▽露周辺での短・中距離ミサイルの配備▽ウクライナ領内への恒久的兵力の配備-などの相互制限を提案していると明かした上で、これらの議題でロシアは交渉できると表明。ただ、ロシアの要求は「包括的なパッケージ」であり、個別ではなく全体的に協議すべきだと注文を付けた。

ロシアは昨年12月、米国とNATOに対し「NATO不拡大」の確約などを要求。米国とNATOは今年1月、NATO不拡大には応じない一方、ミサイル配備制限などでは協議できるとする回答をロシアに提示した。ロシアは再回答文書を作成するとしていた。 一方、露外務省のザハロワ報道官は18日、在モスクワ米大使館のゴーマン次席公使を追放処分にしたと発表した。在ワシントン露大使館の外交官が追放されたことへの報復だと説明。米国側は追放を不当とし、対抗措置を検討するとした。

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