近鉄奈良線の奈良行き電車に乗り大和西大寺駅を発車すると間もなく、車窓に広大な緑の空間が広がる。国の特別史跡、歴史公園で世界遺産の平城宮跡(奈良市)だ。今年は、史跡指定100年という記念すべき節目となる。
平城宮は奈良時代の平城京の中枢で、皇居と国会議事堂、霞が関の官庁街を集めたような場所。1300年前のまさに首都・東京だったのだ。
車窓には、平成10年に復原された朱雀(すざく)門、奥には同22年復原の第一次大極殿(だいごくでん)が目に入ってくる。朱雀門は平城宮の正門、大極殿は国家的な儀式が行われた重要な施設だった。朱雀門周辺では近年、宮跡を紹介する施設も開館した。そしてこの3月には、第一次大極殿院の正門だった大極門(南門)の復原も完了するなど、かつて草木に覆われていた宮跡は一変しつつある。
平城宮跡は約120ヘクタールで、阪神甲子園球場の約30倍。都市部にもかかわらず広大な空間が残り、役所などが並んだ古代の遺構が地下に保存され、奇跡的な場所だ。基壇(建物の土台)や遺構の表示があるだけでもスケールの大きかった宮の姿を想像することはできるが、復原建物は朱色の柱や甍(いらか)の波が壮麗で、より多くの人の印象に残るだろう。