雲雀丘学園中学・高校、岡村学園長に聞く「学校が変わらなければ」

インタビューに答える雲雀丘学園の岡村美孝学園長=1月27日午後、兵庫県宝塚市(柿平博文撮影)
インタビューに答える雲雀丘学園の岡村美孝学園長=1月27日午後、兵庫県宝塚市(柿平博文撮影)

少子化が進み、各私立学校が〝生き残り〟に頭を悩ませる中、評価を高めている私立雲雀丘学園中学校・高校(兵庫県宝塚市)。サントリー創業者の鳥井信治郎氏が初代理事長を務めた同校で陣頭指揮に立ってきたのが、営業第一線から役員まで40年以上も同社に勤めてきた岡村美孝学園長(71)だ。「社会の『向かい風』に立ち向かっていく子供を育てるには、学校も変わらなければ」という岡村さん。産経新聞と行う中3生の出前授業に自ら加わり、生徒に、時に力強く、そして時に優しく、げきを飛ばし続けた。異色の教育者が抱く教育論を紹介する。(聞き手 総合企画室、広瀬一雄)

《今年1月、雲雀丘学園中学校を受験した小学生は、過去最多の1066人に上った》

現役高校3年生の3分の1にあたる生徒が国公立大学に進みます。年々割合が上がり、今では関西の私立高の中でも上位に入る。ですが、雲雀丘に入学してくる子供たちは、ずばぬけて勉強ができるというよりも、一生懸命勉強して目標の大学に進もうという子供たちばかり。熱心に全力を挙げて指導してくれる教師には、本当に頭が下がります。

しかし勉強ばかりではありません。クラブ活動もがんばる。勉強だけでは世の中に貢献できる子供たちを育てられない。勉強とクラブを両立させて初めて全人格的な子供が育つ。

私立中学を受験しようという子供たちやお母さんに「雲雀丘学園っていい学校だな」という感触が、じわじわと広がってきているんだと感じます。

自ら先頭に立って模範 言ったことは必ず実現

《サントリーの営業現場で40年以上も働いてきたが、教育現場に異例の転身となった。就任2年目には中学・高校の校長に就任し、最前線に》

学校現場に入ってわかったのですが、学校の教師はとにかく忙しい。時間的に余裕がないから、どうしても前例踏襲主義に陥ってしまう。雲雀丘学園だけでなく、教育界全体の問題です。そういう中で、とにかく『変われ、同じことをするな』と、ずっといい続けました。民間企業が前年と同じ方針、同じことをしていては、商品は売れません。当然、トップも前年と同じことを言っている人は一人もいません。

しかし周囲に「変われ」とただ言い続けるだけではだれもついてきません。自らが先頭に立ち、率先垂範する。同時に「自分が言ったことを必ず実現する」ことが大切です。

校長に就任した最初の職員会議で「起立」「礼」「着席」というあいさつの練習から始めました。生徒を前にした最初の全校集会でも、1500人の生徒とともに、あいさつの練習をしました。

民間企業に勤めた経験から、優秀な社員はきちんとあいさつができる。実感です。コミュニケーション能力、協調性、リーダーシップの基本にもなる。自分自身が毎朝校門にたち、子供たち一人一人に声をかけました。

教師に対しても、夏休みの一定期間、サントリーが商品を販売する現場で学んでもらうようにしました。座学ではありません。スーパーに行き、バックヤードから商品を運び、並べる。値札をつける。学校以外で社会経験のない教師が、大学の机上で学んだ学問だけを教えているのはよくありません。

研修を受けた若い教師から「お客さんに商品を買ってもらうにはどうすればいいのか、現場で体感することができました」という感想を聞きました。校外の実社会、巣立った子供たちがどんなところで働くのか。それを知ることで、教室での授業にも深み、厚みをもたせることができます。

また建学の精神についても、学園の前面に押し出せるよう、できるだけ具体的な取り組みを行ってきました。

親孝行「孝道」を重視 言葉だけではだめ

《鳥井信治郎氏も重視した、親孝行を意味する「孝道」を、雲雀丘学園は建学の精神とする。岡村さんは、さらにサントリーのチャレンジ精神を表す言葉「やってみなはれ」を加え、教育方針の2つの柱として推し進めてきた》

校長になったばかりのころ、西宮市の会場で説明会をしたときのことです。孝道、つまり親孝行を重視していますよ、と説明したのですが、終了後、ある保護者の方から「具体的にどんなことをされていますか」と尋ねられたのです。

標語はいくらでもつくることができる。行動、実践できる子供になってもらわなければならない。翌年度からすぐ実行に移しました。毎年10月1日を「親孝行の日」と定め、その前日の9月30日には、生徒が何か料理を1品つくって、家族の方にふるまう。

お母さんからは、木の葉の形をした用紙に感想を書いていただき、「親孝行の木」をつくりました。一つ一つの文章を読んでいると涙が出てきます。料理をつくることもそうですが、会話が増え、親子の触れ合いも増える。おじいさん、おばあさんに料理をふるまった生徒もいました。

訂1T向い風に翔べ【ポイント表】C
訂1T向い風に翔べ【ポイント表】C

子供たちには、いろいろなことに挑戦してほしい。毎年4月に、1500人の生徒にどのような挑戦をするかを書いてもらいます。全員に書いてもらう。それに対して、一人一人に返事を書きます。卒業式のときに「約束したことができました」と報告に来てくれる生徒もいます。

さまざまな取り組みを、今も教師たちが引き継いでいってくれています。私も「学園長便り」というブログも含めて、建学の精神や新しいことへの挑戦を、何度も発信し続けています。言葉だけではない。私たち教師も、生徒も、常に挑戦し、新しいことを具体的に行動していかなければならないんです。

会員限定記事会員サービス詳細