北京冬季五輪アイスホッケー男子の予選が行われた国家体育館。地元中国は強豪カナダに挑むも、なかなか得点機が訪れない。観客のじれるような空気を察した会場アナウンスが「一、二!」と中国語で呼び掛ける。観客席は「加油(ジャーヨウ=頑張れ)!」と応じ、大合唱がしばらく続いた。
五輪関係者が遵守(じゅんしゅ)すべき行動規範「プレーブック」は、競技会場では「叫ぶ」「声援する」「歌う」ことをしないよう明記。代わりに「拍手」で選手への「サポートや祝福」を行うよう求めている。国際オリンピック委員会(IOC)などとともにこのルールを決めたのは大会組織委員会、つまり中国自身である。
北京五輪で観戦チケットは一般向けに販売されておらず、競技を見守っているのは政府や企業などの関係者である招待客とチーム関係者、メディアらだ。論理的に考えれば、招待客もこの声援禁止ルールに準ずる扱いになるはずだが、「グレーゾーン」として容認されているのか。
それは考えられない。カーリングの競技会場に招待されたAP通信の北京駐在記者が書いた記事によると、会場には中国語と英語で「声援禁止」と書かれた表示があったという。やはり招待客もルールの適用対象なのだ。
観客による声を上げての応援自体を問題視したいわけではない。自然発生的な歓声や声援は全く問題ないと思う。スポーツの会場はにぎやかに盛り上がったほうがいいに決まっている。「中国隊、加油!」の大合唱が巻き起こった女子アイスホッケー中国代表のスウェーデン戦を取材していたスウェーデンメディアの男性記者は「個人的には声援は気にならない。ルールが奇妙で、変えたほうがいい」と話した。私も同じ意見だ。