アプリで混雑情報提供 西鉄など実験 

西日本鉄道と日立製作所が提供するアプリ。混雑情報や立ち寄り店が表示される
西日本鉄道と日立製作所が提供するアプリ。混雑情報や立ち寄り店が表示される

「図書館に行きたいが電車が混んでいる。喫茶店でコーヒーを飲んでから向かおう」-。こんな行動の判断材料となる経路検索アプリを、西日本鉄道と日立製作所が提供し、公共交通の混雑回避につなげる実証実験を進めている。経路検索アプリは一般的に目的地までの最短距離が表示されるが、新型コロナウイルス禍の影響で、密を避けるためにも混雑情報に価値を感じる人が増え、寄り道情報の提供が新たなサービスとなった。このアプリを使って経路を選択すれば、日常生活にゆとりが生まれるかもしれない。

両社が提供するアプリで経路検索をすると、目的地までの鉄道やバスの混雑状況や、混雑を回避できる経路、周辺にある立ち寄り先が表示される。3月7日まで、参加者を募ってアプリを利用してもらい、混雑緩和や周辺施設への誘客などの効果を検証している。

対象の交通機関は、西鉄天神大牟田線のほか、福岡市中心部や福岡県久留米市などを通る西鉄バス。立ち寄り先として、駅やバス停周辺にある喫茶店やスーパー、商業施設などが表示される。

混雑情報や利用できる店舗が分かれば、ストレスなく移動でき、時間の有効利用も可能となる。立ち寄り先は利用者の好みや、健康志向が高いなどの特性に合わせて提案され、乗客のライフスタイルの向上に加え、周辺施設への誘客につなげることができる。実証実験に参加するハンバーガーカフェの宮崎一成店長は「店内利用はコロナ前に比べ圧倒的に落ちた。テークアウトもしており、アプリを通じて集客したい」と語った。

西鉄と日立は平成30年から、バスなどの利用状況や走行実績といった情報「ビッグデータ」を分析し、効率的な運行につなげる取り組みを進めてきた。西鉄はまだ九州でICカード乗車券が普及していなかった時期に、バスにも使えるIC乗車券「nimoca(ニモカ)」の開発に着手、カード提供を通じて膨大な乗降データを保有してきた。このデジタルデータの蓄積が、より複雑で高度な情報提供を可能としたという。

乗客が混雑を回避すれば交通事業者にもメリットが生まれる。西鉄は、乗客が多い時間帯に車両や乗務員を増やしているが、混雑のピークが緩和すれば、人員や車両の最適配置ができ、コストの削減につながる。バス業界は、長時間労働などを背景に運転手の採用難や離職が慢性化していることが課題となっており、乗客の行動変容は経営環境の改善にも寄与する。

西鉄と日立は、このアプリの提供で乗客の快適な移動と経済活性化の両立を目指す。日立の担当者は「コロナによって生活スタイルが変わり、定時制や安心安全に加え、快適性が新たな価値観として加わった。『混雑』は移動に関する重要なメッセージとなった」と説明する。

一方、西鉄の担当者は「ラッシュの解消で輸送の効率化が図れると、コスト削減や環境問題への対処にもなる。まちへ人が移動することで、新しい需要も生まれる」と期待した。(一居真由子)

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