15日に行われたノルディックスキー複合男子個人ラージヒルで、渡部暁斗(北野建設)が3大会連続メダルとなる銅メダルを手にした。銀メダルを獲得した平昌五輪後は、走力強化に取り組んできた。5位で迎えた後半の距離ではゴール前まで金メダル争いを演じ、成果を感じさせた。
走力を上げるため、最初に着手したのが上半身の強化だった。体が大きくなったことで飛躍のバランスが崩れ、前半で遅れる試合が目立った。「やってみないとわからない。それはそれでよかった」と前向きにとらえ、解決策を模索した。
33歳という年齢による衰えも感じていた。自身の力を最大限に引き出そうと、細部にこだわった。距離の陸上練習で使うローラースキーの摩耗具合は左右均等になった。ロスなく推進力を得ている証拠で、北野建設の横川朝治監督は「変な癖がない。そこまで気を使って滑るのは努力」と驚いた。ペース配分や相手の心理を読む力など経験で培ってきたものも生かした。
15日の個人ラージヒルでは、集団を引っ張る時間が長かった。「自分でいいペースを作らないといけなかった。最後は(力が)残っていなかった」。ゴール前で猛追してきた2人にかわされたが、全体10位のタイムで走り切り、銅メダルをつかんだ。
距離の強化は、日本が抱える積年の課題だった。前回平昌五輪の団体戦で4位に終わり、河野ヘッドコーチは「飛躍はいいところにいる。距離の強化が必要」と考え、改革を進めた。
平昌五輪後から、フィンランド人指導者をアドバイザーとして招聘(しょうへい)した。心拍数や乳酸値などから練習強度を3段階に分け、強度の低い練習をより多く行うようにした。ただ、思うような結果は得られず、2年で方針転換した。現在は低強度が最も多く、中強度より高強度の割合を増やした。
「両極端に分けると、自然と真ん中の中強度も上がってくる」と渡部暁は効果を実感している。河野ヘッドコーチも「挑戦には失敗がつきもの。今はこのやり方の方がいいだろうなと思う」と説明した。
17日には複合の最終種目となる団体がある。7大会ぶりのメダル獲得、そして「複合ニッポン」の復活へ戦いは続く。(小川寛太)