たとえ被害者と会う前に犯行を断念したとしても、特殊詐欺の「受け子」には未遂罪が成立する-。若者などがアルバイト感覚で特殊詐欺に手を染めるケースが後を絶たない中、最高裁第3小法廷(戸倉三郎裁判長)が、こんな判断を示した。
対象となったのは、金融庁職員になりすまし高齢者からキャッシュカードや現金を詐取したなどとして窃盗と窃盗未遂の罪に問われた男(25)の公判。被害者宅を訪れカードを封筒に入れさせ、別の封筒とすり替える手口で盗み取り、現金を引き出す役だった。
1審山形地裁は令和2年3月、懲役4年8月の実刑判決を言い渡し、2審仙台高裁も支持した。男はこれを不服として上告。弁護側は上告趣意書で、認定された罪のうち、1件の窃盗未遂罪については「被害者宅に向かう途中、警察官に尾行されているのに気づき、犯行を断念した」などとして「成立しない」と主張した。
これに対し同小法廷は、共犯者が被害者に噓の電話をかけ、男が被害者宅周辺まで赴いた時点で「キャッシュカードの占有を侵害するに至る危険性が明らかに認められる」と指摘。同罪の成立を認めた1、2審の判断は正当だとし、今月14日付で上告を棄却する決定をした。