電事連の池辺会長、エネルギー政策「科学的議論」を

記者会見する電気事業連合会の池辺和弘会長
記者会見する電気事業連合会の池辺和弘会長

電気事業連合会の池辺和弘会長(九州電力社長)は16日、日本記者クラブ主催のオンライン記者会見で、脱炭素社会の実現に向けた取り組みについて「電力供給側はもちろん、需要側もあわせて両面の取り組みが重要だ」と述べた。

記者会見で、池辺氏は2050年に温室効果ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラル社会の実現に向け、発電側の取り組みとして再生可能エネルギーの導入を進めると説明。その上で、気象条件などに左右される発電量の不安定さを補うため大型蓄電池などの技術開発の必要性を強調した。

一方、再エネの普及促進を目指した固定価格買い取り制度(FIT)には「電化の推進には安価な電気料金が必要だが、FIT賦課金の上昇がブレーキをかける。社会全体の負担のあり方を考える必要がある」と訴えた。2020(令和2)年度の賦課金総額は2・4兆円に上り、平均的な家庭で1カ月あたり774円を負担している。

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原子力発電に対しては「確立した脱炭素技術であり、電力供給の安定性や運転コスト面でも欠かすことができない」と強調。東京電力福島第1原発事故後の原発の長期停止で「(国内で)供給力が恒常的に不足し、火力発電(の燃料調達動向や資源価格)が(電気料金や需給バランスに)大きく影響与えている」と指摘した。

足元の電力需給逼迫(ひっぱく)やウクライナ情勢などを受けた資源価格の高止まりの長期化懸念を念頭に「エネルギーセキュリティーはナショナルセキュリティーだ。原発再稼働を早期に進めるため(審査する原子力規制委員会の)要員を追加することが重要だ」と述べた。

また、原発の新増設が長期間滞っている現状が関連産業に携わる人材や技術の先細りを招いていることに触れ、「(原発利活用について)国からも早期に明確なメッセージを出してもらいたい」と力を込めた。

あわせて、現在は13カ月ごとに実施している原発の定期検査の間隔が法的には延長可能なことを問われ「技術的な検証を進めている」とした。原子炉等規制法上原則40年とされる運転期間延長には「(既存原発の有効活用は)二酸化炭素を削減するためのコスト効率が最も良い。科学的な論拠に立って議論してもらいたい」とした。

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「科学的な議論」とは、池辺氏が常に原子力政策をめぐる見解で強調することだ。16日の記者会見でも、脱原発を進めるドイツと、原発の活用を進めるフランスを対比させた質問に対して、池辺氏は「原子力のベネフィット(恩恵)とリスクを皆で議論するべきときではないかと思っている」と応じた。

ただ、このような冷静な議論に逆行する動きはいまだあり、社会的影響力を持つ層からの発信も問題化している。小泉純一郎、菅直人両氏ら5人の首相経験者が1月、「福島県内の子供が甲状腺がんに苦しんでいる」などとした書簡をEU(欧州連合)欧州委員会に送ったことはその典型だ。

この書簡に対し、山口壮環境相は1日、福島原発事故による被爆と発症の関連性は認められないと反論。両者の因果関係については国連放射線影響科学委員会など、国内外の専門家や研究機関が否定している。しかし5氏は「脱原発」運動に取り組む市民団体を通じて抗議を重ねた。

この際、政府側の反応を「原発のマイナスイメージや反原発世論を拡大したくないという思惑」「裏では、原発の再稼働や新増設を目指す『原発ムラ』の意向が働いているのだろう」などと解説する一部報道もあった。

原子力をめぐり、冷静かつ科学的な議論を進める上で、いたずらに扇動的な言論は不要だ。(中村雅和)

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