TOKYOまち・ひと物語

総菜で家庭にゆとりを 宅配サービス「つくりおき.jp」社長 前島恵さん

食事の外注が許容されることで「家庭にゆとりを生み出したい」と話す前島恵さん=東京都千代田区
食事の外注が許容されることで「家庭にゆとりを生み出したい」と話す前島恵さん=東京都千代田区

「あらゆる家庭から『義務』をなくしたい」。総菜の宅配サービス「つくりおき.jp」を運営する「Antway」(東京都千代田区)の社長、前島恵(けい)さん(33)は、そう力を込める。同社は主に共働き家庭のため、日々欠かせない食事を総菜として届けている。配達を通じて生まれたゆとりの時間で「人生をより豊かにできる社会を作りたい」。ライフスタイルが多様化する中、現代人の選択肢の一つとして、食事の宅配サービスを提供している。

同サービスは、無料通信アプリ「LINE(ライン)」から3食か5食プランを選択し注文すると、毎週決まった時間に4人家族を想定した量の総菜が冷蔵で配達される。塩こうじハンバーグ、三元豚バラ肉のごまだれ焼き、ひじきと切り干し大根のサラダなど、管理栄養士が監修した家庭的で栄養バランスの良いメニューが週替わりで届く。現在、東京都、神奈川、埼玉、千葉県の一部に当日調理された総菜を手渡しで配達している。

冷蔵にこだわり

冷凍の総菜やミールキットなど食事を助けるサービスが増える中、「圧倒的に味が良く、安心して食べられるのは冷蔵だ」とこだわった。家庭では使いづらいが料理を彩るクルミやゆずなどの食材を使用したり、大根の角を丸くしたりするなど、総菜の利点を生かして「家庭では難しい最後の一手間を加えている」という。季節の食材やメニューも取り入れ、食事の楽しさも届けている。

大事にしているのは、毎週利用者から寄せられるアンケートの声。人気メニューを再提供したり、切り方を改善したりすることなどに生かしている。要望が反映されることで、「家と同じ安心感で外注できるクラウド台所」と、家庭を理解してくれる身近な存在に感じられるよう努めている。

「大きく深い課題を解決したい」という思いを持っていた前島さん。日本の社会課題を考えたとき、共働きが増えて家事、育児、仕事と忙しい子育て世帯は、「特に女性が食事を作って当たり前になっている」。あらゆる家庭の義務の中から、まずは食事を解消しようと同サービスを開始した。

料理を作ることを義務と感じる人は、「手作りじゃないといけない」という社会的圧力が大きいとされるが、「大事なのは家庭ごとの愛情のかけ方で、必ずしも料理ではない」(前島さん)。総菜を取り入れることで自由になった時間を、子供と遊んだりお風呂に入ったりなど、それぞれの家庭にとっての愛情の時間に使ってほしいと願っている。

外注の罪悪感なく

もちろん、「料理が好きな人は料理をしてもらいたい」と愛情のかけ方が食事という人の姿勢も尊重する。ただ、1日3回の食事は「常に脳のシェアの一部を奪っている」。一度注文するとメニューや配達日を設定する必要のない同サービスにより、「料理に関する心配そのものをなくしていきたい」という。

外注することへの恥ずかしさや罪悪感を取り除き、「義務が強要されず、外注が許容される文化を作りたい」という前島さん。「安心して食べていただける味を提供し、それぞれの家庭のライフスタイルに寄り添いたい」と、配達エリアの拡大や、味や量に柔軟性を持たせたいとサービスの進化に向けて意気込む。

いずれは食事以外の家庭の「義務」の解消にも取り組んでいくつもりだ。(鈴木美帆)

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