冬季五輪の華ともいわれるアルペンスキーで、日本男子ただ一人の北京大会代表、小山陽平(23)=ベネフィット・ワン=が16日の回転に出場する。「チャンスはある。集中して滑りたい」。初の五輪にも臆することなく海外の強豪に挑む。
アルペンスキーはコース上の旗門を通過し、コブや斜面変化を攻略しながらタイムを競う競技で、「スピード系」と呼ばれる滑降とスーパー大回転、高度なターンが見せ場となる「技術系」の大回転と回転がある。日本ではなじみは薄いが、欧米では人気が高く、アルベルト・トンバ(イタリア)、ヘルマン・マイヤー(オーストリア)ら世界的スターが生まれている。
小山は昨年12月のワールドカップ(W杯)回転第2戦で日本勢として5季ぶりの1桁順位となる8位に入り、五輪代表を勝ち取った。それまでW杯得点(30位以内)の経験が一度もなかった中での快挙に「やるべきことをやれば、ちゃんと結果は付いてくる」と自信を深めた。
石川県出身。スキーの強豪として知られる北海道・双葉高(現小樽双葉高)に進んで腕を磨き、2016年冬季ユース五輪で大回転の銀メダルを獲得。17年には世界選手権に出場するなど国際経験は豊富だ。
競技者として背中を追ってきたのは前回の平昌(ピョンチャン)大会まで日本のエースだった湯浅直樹(38)=シーハイルアカデミー。W杯最高成績3位、06年トリノ五輪は7位で、4位の皆川賢太郎とともに入賞を果たした。その憧れの先輩は1月下旬に今季限りでの引退を表明。小山は「後釜といったらおこがましいが、湯浅さんみたいになりたい」と覚悟を見せる。
五輪のアルペンスキーは日本勢が冬季五輪で初めてメダルを獲得した種目だ。1956年コルティナダンペッツォ(イタリア)大会で猪谷(いがや)千春が男子回転で銀メダル。しかし、近年はトリノで皆川、湯浅が入賞した以外は1桁順位はなく、厳しい状況が続いている。湯浅は後輩に対して「世界のトップは、とんでもない身体能力の持ち主が命を懸けてやっている。そういう覚悟があるかだ」と説く。
選考会に落ちて代表になれなかった平昌大会から4年。悔しさをバネに大きく成長した日本のホープは「日頃から応援してくださっている方々への感謝を忘れずに、五輪という舞台を楽しめたら」。周囲の期待を背負い、雪上に立つ。