死刑執行の当日告知は憲法違反―。死刑判決が確定し、執行の時を待つ死刑囚2人が、当日告知による執行を受け入れる義務がないことの確認などを求める訴えを昨年11月、大阪地裁に起こした。法律は、法務大臣の命令から5日以内に執行するよう定めているが、告知時期の規定はなく、かつては死刑囚本人に対し前日までに告知したこともあった。なぜ当日告知で統一されたのか。国は理由を明らかにしていないが、執行に携わった経験を持ち、平成19年に退官した元刑務官の藤田公彦(まさひこ)さん(75)が複雑な事情を明かした。
告知から1~2時間で
「なんですか?」
「いいから出てこい」
平日の午前10時ごろ、刑務官4、5人が訪れ、有無を言わさず死刑囚を独居房から廊下へ出す。いつもとは違う角を曲がり、5~10メートルおきに配置された刑務所職員が目に入ると、死刑囚が抱いた疑念は確信に変わる。