北京の青空にとびきりの笑顔がはじけた。北京冬季五輪のスノーボード女子ビッグエアで15日、村瀬心椛(ここも)(17)が銅メダル。4年前に選手生命を脅かす大けがに見舞われながらも、理解ある指導者や恵まれた環境に支えられ、再び高く羽ばたいた。高校の先輩にあたるモーグルの堀島行真(いくま)(24)に続く快挙に、恩師は「ハラハラしたけれど『よくやった』と褒めてやりたい」と喜びをかみしめた。
2018年5月、13歳でトッププロが競う招待大会のXゲームに挑み、見事に史上最年少優勝。一躍その名が知れ渡った。だがこの年の冬、競技人生が暗転する。米国での練習中に右膝蓋(しつがい)骨を骨折。大会出場はもちろん、ボードを履くことすらできない悔しさを味わった。
大けがからの再起を期す村瀬は、地元の岐阜第一高(岐阜県本巣市)を進学先に選ぶ。同校普通科には、トップアスリートを養成する「スポーツコース」が設置されている。ウエートトレーニングの器具や自転車型のトレーニングマシンなど、フィジカルを鍛え上げるにはうってつけの環境だった。ここで時間をかけてリハビリや筋力強化に取り組む日々。自宅から近く、家族のサポートを受けやすい恩恵もあった。
村瀬が所属するスキー部の先輩には、北京五輪にともに出場したオリンピアンがいる。フリースタイルスキー男子モーグルで、日本勢第1号となる銅メダルを獲得した堀島だ。
今大会で2人のメダリストを輩出した同部の大場順二総監督(63)は、村瀬と堀島の共通点として五輪にかける「強い気持ち」を挙げる。
「『五輪に出たい』というアスリートはたくさんいるが、多くは努力が伴っていない。その点、2人は違っていた」
物おじしない性格の村瀬は地道なトレーニングもいとわなかった。屋外施設でジャンプの練習を重ね、けがの恐怖心も克服。「調子がいいときも悪いときも、並外れた強い意志と努力を継続できる」。大場総監督が語る村瀬の真骨頂だ。
この日、テレビ中継で教え子の快挙を見守った大場総監督は「(選手とともに)失敗や悔しい思いをたくさんしてきたが、自分がかかわった選手が五輪で2つもメダルを取ったというのは不思議な感じもする。この場面に立ち会えてよかった」と喜んだ。(小川原咲)