脳神経外科の外来では、頭痛が原因で多くの患者さんが受診されます。たとえ軽い頭痛でも、しばらく続けば「脳に何か悪いものがあるのではないか?」といった不安が生じてしまいがちです。しかし安心してください。脳に何か悪いものがあるために起こる頭痛(二次性頭痛)は、脳には何も悪いものはないけれど頭痛だけが起こる病気(一次性頭痛)よりはるかに少ないのです。二次性頭痛を起こす代表的な病気は、くも膜下出血と脳腫瘍ですが、これらの患者数は年3万人といわれています。一方、一次性頭痛の患者数は約4000万人にのぼるといわれており、圧倒的に多いことがわかります。
一次性頭痛のうち最も多い病気が緊張型頭痛で、2200万人(15歳以上の国民の22%)といわれています。次いで多いのが片頭痛で、840万人(同8・4%)です。今回はこの最も頻度の多い、ありふれた頭痛ともいえる緊張型頭痛について解説します。
緊張型頭痛の緊張とは筋肉の緊張を意味します。すなわち頭の周囲や首の筋肉が過剰に緊張することが原因で起こる頭痛を総称しています。実際首や後頭部、こめかみ部などを指で押さえてみると筋肉が部分的に硬くなり痛みを感じる部分が認められます。つまり、頭頚部の筋肉が肩こりのように「凝っている」状態なのです。どうしてこのように筋肉が緊張するのかははっきりとわかっていませんが、精神的ストレスや不安、頚椎の変形や姿勢の異常などが複合的に関連していると思われます。
痛みの特徴は、両側の頭部に締め付けるような、あるいは重りを乗せたような痛みです。痛みの程度は強いものではなく、頭が重いと表現する人もいます。吐き気や嘔吐もなく、痛みのために日常生活が制限されることもないのですが、だらだらと一日中、毎日痛みが続くこともあるのでとてもうっとうしく、不安にも感じます。
短期間に自然に治ることも多いのですが、悪循環に陥ると治りにくくなります。通常病院に受診するのはそんな場合です。治療としては普通の痛み止めがよく効きますが、慢性化した頭痛では頓服で1、2回痛み止めを飲んでも、薬が切れるとまた痛くなります。したがって数日間は薬を続けて飲み、痛みの悪循環を断ち切る必要があります。ただしあまり長期にわたって習慣的に飲み続けると、今度は薬が原因で頭痛が起こり、治りにくくなるので注意してください。
頭痛のなかで最も多い緊張型頭痛。ありふれた頭痛ですが正しい知識が必要です。
(済生会和歌山病院副院長 兼脳神経外科部長 小倉光博)