地方に勝機

荒廃農地を救え 栃木県益子町でウシ放牧、人との共生目指す

牛舎から放牧場に向かうジャージー牛=2日、栃木県益子町(鈴木正行撮影)
牛舎から放牧場に向かうジャージー牛=2日、栃木県益子町(鈴木正行撮影)

高齢化や後継者不足で日本各地に増え続ける耕作放棄地。栃木県益子町の耕作放棄地を開拓し、希少なジャージー牛を放牧することでウシと人との共生を目指す酪農家がいる。「人が集まり仕事が生まれる場所を作りたい」。この理想を胸に、平成23年の東京電力福島第1原発事故で一時は放牧ができなくなる危機を克服。荒廃した農地の解消に悩む地方自治体と協業し、新たな波を起こしつつある。

希少種のウシを放牧

のどかな晴天が広がった2月上旬。益子町の「森林ノ牧場 益子」では、牛舎から現れたジャージー牛9頭が、電気柵で作られた誘導道を通り、広々とした放牧場に向かった。

「このウシは数日中に出産する予定です」。牧場を経営する森林ノ牧場(同県那須町)の代表取締役、山川将弘さん(39)は会員制交流サイト(SNS)にアップする写真を撮りながら笑みを見せた。

実はこの牧場、昨年12月に益子町の耕作放棄地を開拓してウシを飼い始めたばかり。それでも益子町が出資する第三セクターが運営する「道の駅ましこ」で、共同開発した新商品「みるくぷりん」を発売するなど順調な滑り出しをみせる。

牧場長として那須町から移住してきた岸野椿さん(25)は「最初に見たときはセイタカアワダチソウが一面に生えており、驚いた」と振り返る。「いまは一から作る楽しみにわくわくしている」と話す。

森林ノ牧場は平成21年、那須町で使われなくなっていた山林を開拓して酪農を始めた。搾ったミルクの香りや味の良さが特徴で、国内乳牛の1%未満という希少なジャージー種のウシを飼育。牛舎の中で容器に入った飼料を与えて育てる一般的な酪農ではなく、自然に近い環境でのびのび育てる放牧を採用した。

その後、運営会社が撤退した際、社員だった山川さんが会社を引き継いだ。山川さんいわく「僕らが食べられない草を食べ、ミルクやお肉を人に提供してくれる価値のある」ウシとの共生を目指してきた。

ところが、そこに不測の事態が生じた。東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故だ。安全配慮のために放牧ができなくなり、生乳も売れないという廃業の危機にひんした。しかし、周囲の協力を得ながら牧場を除染、安全性を確認し、3年後に放牧を再開した。

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