原発稼働で住民投票実施せずを示した米子市議会

中国電力の島根原子力発電所。2号機の再稼働と3号機の新規稼働の賛否を問う住民投票条例案は米子市議会で否決された(沢野貴信撮影)
中国電力の島根原子力発電所。2号機の再稼働と3号機の新規稼働の賛否を問う住民投票条例案は米子市議会で否決された(沢野貴信撮影)

中国電力島根原子力発電所(松江市)から30キロ圏内に市域の一部が入る鳥取県米子市で、住民団体が制定を求めた島根原発稼働の賛否を問う住民投票条例案が市議会で否決された。条例案には、同市の伊木隆司市長が「稼働は国が責任をもって判断すべきもの」として、制定に反対する意見をつけていた。再稼働をめぐっては同じく30キロ圏内の同県境港市、立地自治体である松江市で住民投票条例案の審議中。島根県出雲市でも条例制定を求める動きがあり、米子市議会の「住民投票実施せず」の判断は3市にも影響を与えそうだ。

外国人を含む15歳以上に投票資格

島根原発2号機は昨年9月、原子力規制委員会の審査に合格し、再稼働が視野に入っている。

島根原発の周辺自治体として避難計画の策定が義務付けられている米子市が、境港市や鳥取県とともに中国電と結んでいる「島根原子力発電所に係る鳥取県民の安全確保等に関する協定」(安全協定)では、米子市などは稼働の是非について同社に意見を述べることができるとしている。

さらに、県と両市は立地自治体並みの「事前了解権」を認めるよう同協定の改定を求めている。

《島根原発2号機の再稼働、3号機の新規稼働の賛否について市長が判断する際、市民投票を行う。投票は賛成か反対かで行い、市長はその結果を尊重する。投票資格者は米子市に住所がある15歳(高校1年相当)以上で外国人も含む》

これが、住民団体「島根原発稼働の是非を問う住民投票を実現する会・米子」が法定(有権者の50分の1=2446人)の5倍以上にあたる1万3364人の署名を添えて制定を請求した住民投票条例案の概要だ。

島根原発の稼働の賛否を問う住民投票条例案を否決した米子市議会。制定賛成10人(起立)に対し反対は15人だった
島根原発の稼働の賛否を問う住民投票条例案を否決した米子市議会。制定賛成10人(起立)に対し反対は15人だった

「事前了解権はある種の拒否権」

米子市議会で2月1日から3日まで行われた議論のポイントは、①稼働の判断は国とする一方で、中国電に事前了解権を求める市の姿勢の整合性②投票の選択肢が二者択一であること③外国人を含む15歳以上とする投票資格者要件の是非-だった。

「稼働するかしないかは市民の暮らしに大きな影響をおよぼす。国策だから国に従うという考えは、国と地方は対等とする地方分権一括法の原則に対する認識の欠如。事前了解権を求める姿勢と矛盾する」。住民団体や条例案賛成の議員はこう主張した。

これに対し、市や反対派議員は「原発はエネルギーの安全保障や経済に与える影響、地球温暖化対策などの諸課題が複雑に絡み合った国家の将来に多大な影響を与える課題」と強調。その上で、伊木市長は「仮に市が了解の判断をしたとしても、それをもって『稼働してください』という意見にはつながらない。安全でない状態で稼働となった場合には、安全協定に基づいてしっかり意見を言う。事前了解権はある種の拒否権だ」との考えを示した。

投票方法について住民団体は「市長意見は賛成か反対かが重要な柱。そう考えると、投票方法は賛成、反対の二者選択になる」と主張。一方、市や反対派は「単に賛成、反対では、中間に寄った考えなど住民の多様な意見が反映されない」と反論。伊木市長は「住民代表として多様な背景をもつ議員で構成される議会の議論の方が意見を反映できる」とした。

また、投票資格者について、市や反対派は「年齢や国籍要件は、選挙に関する規定に準じるのが適当。住民投票の賛否が僅差で、議会の結論と反対になった場合、どちらを選ぶのか」と懸念を示した。一方、住民団体や賛成派は「原発の影響は外国人も等しく受ける」「年齢国籍を広げることでより広く正確な民意に近づけることができる」などと主張した。

松江、境港両市長も反対意見

賛成反対両派の主張の隔たりの根底にあったのは「市長が言うべき意見とは何か」「稼働判断主体は誰か」の考え方の違いだった。

住民団体や条例賛成派が考える言うべき意見とは「稼働の賛否」で、判断の主体は「住民と自治体」。これに対し、伊木市長や反対派にとっての言うべき意見は「稼働の大前提となる安全」が主であり、判断するのは「エネルギー政策をつかさどる国」だった。

本会議での採決結果は、賛成10、反対15だった。米子市議会は、国策である原発の稼働判断は住民投票のテーマとしてなじまないという判断を示したといえる。また、議論の俎上(そじょう)には載らなかったが、外国人に原発稼働の投票権を認めることには、国策判断を外国人に委ねる懸念があった。

島根原発2号機の再稼働をめぐる住民投票条例案は、松江、境港両市議会でも審議が始まっており、両市長ともに、米子市長と同様、制定に反対の意見をつけている。注目の採決は松江が15日、境港は17日に行われる。(松田則章)

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