フード

鯉のあらい コリコリとした食感 技光る

臭みのない、あっさりとした味わいの「鯉あらい」(780円)。ほどよく歯ごたえある食感(酒巻俊介撮影)
臭みのない、あっさりとした味わいの「鯉あらい」(780円)。ほどよく歯ごたえある食感(酒巻俊介撮影)

色鮮やかな観賞魚としての印象が強い鯉(こい)だが、かつては海の幸が手に入りづらい内陸部で貴重なタンパク源として親しまれてきた。ビタミンやミネラル類もたっぷり含み、「薬用魚」の異名も持つ。では肝心の味はどうなのか。江戸時代創業の川魚料亭を訪ねた。

京成電鉄柴又駅(東京都葛飾区)から徒歩3分。映画「男はつらいよ」で何度も描かれた柴又帝釈天参道を進んでいくと、大正時代に建てられたという存在感のある建物が目についた。安永年間創業の川魚料亭「川千家(かわちや)」だ。

「柴又帝釈天(題経寺)の参拝者向けに江戸川でとれた川魚を提供する茶店を開いたのが始まり」

「川千家」の店構えは下町情緒になじむ(酒巻俊介撮影)
「川千家」の店構えは下町情緒になじむ(酒巻俊介撮影)

川千家の10代目、天宮久嘉(ひさよし)さん(51)はこう説明する。店で提供している鯉料理の一つが「鯉あらい」。調理場で見学させてもらった。

いけすからすくい上げた鯉の頭を落とし、手早く三枚におろす。腹骨を外すと、皮と身の間に包丁を差し込んで、皮を器用にはがす。銀皮が残った身を薄く切り、湯がいた後、氷水にさらせば完成だ。

巧みな包丁さばきで、一連の作業は10分ほど。料理人の小磯光さん(61)は「身に触れると人の体温が伝わってかたくなってしまうので、最低限しか手を使わないよう気を付けるのが鯉料理の基本。お湯の温度調整は肌感覚だが、やり過ぎるとかたくなりすぎるのであんばいが肝心」と話す。

出来上がった桃色の身を口に運ぶと、コリコリとした弾力のある食感が楽しい。信州みそを2種類混ぜ合わせた酢みそは甘さ控えめで酸味が効いている。食通として知られる作家、池波正太郎が書いた時代小説「鬼平犯科帳」では、主人公の長谷川平蔵が鯉のあらいを食べながら酒を飲む場面が登場するが、確かに日本酒が恋しくなる。

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