考古学の泰斗だった森浩一先生(1928~2013年)は母校・同志社大学の先輩であり、恩師の一人です。その森先生と若き日の私が、大学院の資料室でたまたま2人きりになったときのことでした。
「あのおっさん」は「努力の天才」
先生は、松本清張さん(1909~92年)と親しい関係にあることが巷間(こうかん)に伝えられていました。まず芥川賞作家としてその名が知られるようになった清張さんは、当時すでに社会派推理・時代小説の大家であるとともに、古代から現代まで幅広い分野ですぐれた歴史論考やノンフィクション作品の数々を発表していました。ですので私は、「先生、清張さんはどういう人ですか?」と思い切って尋ねてみました。