家族と挑んだ守護神 アイスホッケー女子・藤本那菜

藤本那菜(右)と父の絢士さん(中央)、妹の奈千さん(家族提供)
藤本那菜(右)と父の絢士さん(中央)、妹の奈千さん(家族提供)

アイスホッケー女子代表「スマイルジャパン」は五輪初の準々決勝で格上のフィンランドと対決。得点を奪うなど奮闘したが、相手の猛打に屈した。3大会連続の五輪となったGK藤本那菜(32)は、集大成の試合で集中力を切らさず、体を張ってゴールを守り続けた。

「GKじゃなかったら早々にホッケーを辞めていると思う」。運動神経も「いい方ではない」。32歳のベテランが下す自己評価だ。

父の絢士(けんじ)さん(57)の勧めで6歳から地元・札幌市のクラブチームでスティックを握った。だがシュートを狙うFWでも、守りのDFでも思うような結果を残せなかった。

〝天職〟との出会いは小学5年。チームで欠員が生じたGKに指名されると、社会人選手として同ポジションの経験があった絢士さんが本格的に指導に乗りだした。娘の高校進学からほどなく、自宅敷地にお手製の練習場も完成させるなど協力を惜しまなかった。

地道な練習は才能を開花させ、17歳で日本代表選手に選出。2015年の世界選手権では日本人初の個人賞「ベストGK」を受賞するなど、日本の守護神の地位を確固たるものにするまでに成長した。

ただ、北京までの道のりは平坦(へいたん)ではなかった。

2020年、スウェーデンのプロリーグでのプレーを経て帰国。もう一度海外で経験を積む機会をうかがったが、新型コロナウイルスの感染拡大で困難になり、所属チームなしで五輪に備えることになった。

再び、自宅が練習拠点となった。現役時代はDFとして活躍し、現在は地元クラブでコーチを務める妹の奈千(なち)さん(30)に上下、左右、斜め…とコースを細かく指定してパックを打ち込んでもらった。多い日で1日のシュート本数は300本を超えることもあったという。

今大会を競技生活の集大成に位置付け、「目に見える結果を残したい」。恩返しの思いは人一倍だ。この日も、リンク最後方からチームを支え続けた。(竹之内秀介)

 

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