昨年のNHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」は、「埼玉三偉人」の一人、渋沢栄一が主役となり、出身地の埼玉県深谷市は大いににぎわった。今年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は舞台こそ譲ったが、鎌倉幕府の有力な御家人である比企能員(ひき・よしかず)、畠山重忠ら、埼玉ゆかりの人物が登場し再び活気づいている。渋沢と異なり知名度は地元ですら疑問符がつくが、縁ある自治体はPRに余念がない。
大きなにぎわい
深谷市は昨年2月16日から今年1月10日まで「渋沢栄一 青天を衝け 深谷大河ドラマ館」を開設。約14万5千人が来場した。同期間中に、市内の渋沢栄一記念館や旧渋沢邸などの関連5施設への来場者は延べ50万人以上に上った。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、県外から観光客の誘致がままならない中、第5波が収まった昨秋以降は大きなにぎわいを見せ、平日でも客足が衰えない盛況ぶりだった。写真やロゴを使用した渋沢関連の商品の売り上げは、令和元年度の約6700万円から2年度は8億8千万円に大幅アップ。3年度の売り上げは今夏にも判明予定だが、さらなる拡大が期待されそうだ。
一方、新大河では深谷市出身の武将、畠山重忠が重要なキャストとして登場している。「2年連続で市ゆかりの人物に光が当たり、市民の機運を盛り上げて地域振興につなげる」と小島進市長の鼻息も荒い。
昨年12月には「重忠様」「しげただくん」という2種類のキャラクターを発表。市の商品に活用してもらうなどの方法で浸透を図っている。
千載一遇
深谷市以上に意気込んでいるのが、同県のほぼ中央に位置する「比企郡」の各自治体だ。大河ドラマでは佐藤二朗さん、草笛光子さんがそれぞれ演じる比企能員、比企尼のゆかりの地である。一昨年12月、東松山市と東秩父村を含む9市町村で「大河ドラマ『鎌倉殿の13人』比企市町村推進協議会」を設立した。
協議会の会長を務める滑川町の吉田昇町長は「歴史の掘り起こしをもって、新しい時代をつくる」と日頃から町役場職員に訴えており、今年の大河は時宜を得た好機。「埋もれた史跡をPRしたい」と意気込んでいる。