「とんでもないことをしてしまった」と誰かが言うとき、そこには苦い悔恨と一つの謎が含まれている。後からとんでもない大騒動になるまで、それがとんでもないことだと気づかなかったのは、なぜなのか。
無知、想像力の欠如、経験の不足、視野狭窄(きょうさく)…。ひっくるめて若さゆえ、ということもあるだろう。先月の大学入学共通テストで、スマートフォンを使って問題をネットに流出させ、東大生に解答を依頼したという大阪府内の女子大生(19)は、家族に付き添われて警察に出頭し「とんでもないことをしてしまった。志望校に受かる自信がなかった」と話した。
「仮面浪人」までして別の大学を目指していたというから、受験に懸ける思いは人一倍だったはず。それがカンニングという、とんでもない結論に行き着いたことに、何ともやるせない気持ちになる。