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葛城奈海 石原慎太郎氏の遺志を継ぐために

尖閣諸島国有化を受けて記者会見する石原慎太郎・東京都知事=2012年9月11日、東京都庁(三尾郁恵撮影)
尖閣諸島国有化を受けて記者会見する石原慎太郎・東京都知事=2012年9月11日、東京都庁(三尾郁恵撮影)

石原慎太郎元都知事の死を悼む声が各界から寄せられている。類いまれな「知行合一」の政治家であり国士であった同氏に私も敬意を抱いてきた。心から哀悼の意を表したい。

尖閣問題に取り組み、現場海域に15回渡ってきた者として、真っ先に浮かぶ同氏の功績は、平成22年の尖閣漁船衝突事件に端を発した日中の緊張関係の中で、事なかれ対応を続ける国に業を煮やし、24年4月、「東京都が尖閣を購入する」と表明したことだ。多くの国民が驚きとともに賛意を示し、「尖閣募金」には14億円を上回る寄付が集まった。同年9月2日には都がサルベージ船をチャーターし、現地調査を行っている。

ところが、その9日後、尖閣諸島の魚釣島、北小島、南小島の国有化が電撃的に発表された。石原氏は当時、大量繁殖したヤギの駆除や船溜(だま)りの設置などを唱えていた。都の購入によって日中間の摩擦が大きくなることを恐れた当時の民主党政権が先手を打ったのだ。以来、中国公船が尖閣海域に頻繁に現れるようになった。

その後、再び自民党政権に戻っても、尖閣での事なかれ対応は、いっそうひどくなり、事あるごとにまったく効果のない「遺憾砲」を連発するばかり。結果として、一歩一歩中国が確実に実効支配の度を増している。

国有化で宙に浮いた「14億円」を国に託すため、都が国への提案要求書を提出していることはほとんど知られていない。そこには、「尖閣諸島の戦略的活用の実施」として、「ヤギの被害から貴重な動植物を守ることや、海岸漂着物の処理などにより自然環境を保全し、また地元漁業者のための船溜りや無線中継基地、さらには有人の気象観測施設といった地元自治体が強く要望する施設を設置するなど、有効活用を早急に図ること」などが求められている。

折しも、先月末に石垣市が中山義隆市長同行による尖閣諸島での海洋調査を実施した。都に寄せられた志を踏みにじらないためにも国は石垣市と連携し、この具体的要求を粛々と実行すべきだ。「国家の意思」を示すことこそが、なにより石原氏の遺志を継ぐことになる。

【プロフィル】葛城奈海

かつらぎ・なみ やおよろずの森代表、防人と歩む会会長、ジャーナリスト、俳優。昭和45年、東京都出身。東京大農学部卒。自然環境問題・安全保障問題に取り組む。予備役ブルーリボンの会幹事長。近著に『戦うことは「悪」ですか』(扶桑社)。

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