がん電話相談から

卵巣がん腹膜転移、突然の「Ⅲ期」診断

Q 39歳女性です。貧血と子宮腺筋症を経過観察中でしたが、超音波検査で左右の卵巣に腫瘍が見つかりました。精密検査を受けたところ、腫瘍マーカー「CA125」が1000以上の高い値となり、画像検査で腹水や腫瘍の腹膜播種(腹膜内に散らばる形での転移)、腹膜の後ろ側の大血管に沿うリンパ節への転移が分かり、自覚症状がないままステージⅢの卵巣がんと告げられました。驚きと不安でいっぱいです。

A 卵巣がんの治療開始時の状態を進行期別にみると、がんが骨盤内に限局しているステージIとⅡが約50%。今回のように骨盤を越えて(ふくくう)内に広がるステージⅢと腹腔を越えて広がるⅣが残りの約50%なので、今回の経過がまれというわけではありません。今回の場合、経過観察中に突然進行した卵巣がんが見つかったこと、CA125は1000以上と高いものの、ほかのマーカー「CEA」や「CA19―9」は正常範囲であるため、卵巣がんのうち「高悪性度漿液(しょうえき)性腺がん」と思われます。

Q すぐに大きな手術が必要なのでしょうか。

A 画像検査で卵巣がんが著しく広がっている場合はまず、腹腔鏡手術でおなかの中を観察し、安全に切除できる範囲で病巣を切除する「試験開腹術」を行い、病理診断を確定させた上で化学療法を開始します。もし、画像検査でがんの広がりがそれほどひどくないと判断されたら化学療法なしで最初から子宮、卵巣・卵管、大網、腫れているリンパ節、腹膜播種病巣をできる限り切除することもあります。今回は抗がん剤への感受性が良好な漿液性腺がんの可能性が高い上、腹腔内臓器の合併切除が複数箇所必要になると予想されるので、試験開腹術の後に化学療法を行うことになるのではないかと思います。

Q 抗がん剤がよく効いても2度目の手術は必要ですか。

A 相談者はまだ若いので、根治を目指したいです。化学療法を3~4サイクル実施後、CA125値が劇的に低下し、腹腔内病巣も縮小すれば、2度目の手術でより安全に、残りの病巣を取り切る「肉眼的根治手術」ができるようになると思います。

Q 手術後も化学療法が必要ですか。

A いくら肉眼的根治手術ができても、ミクロのレベルではがん病巣が残存していると思われますので、化学療法を3~4サイクル追加します。

Q 根治手術後の化学療法で治療は終了ですか。

A 最近は化学療法中に、手術時に採取した組織について遺伝子レベルでDNA修復の仕組みに異常があるかを調べる「相同組み換え修復欠損(HRD)検査」を並行実施します。

もし欠損がある「陽性」であれば、化学療法後の再発予防として、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の働きを抑えるPARP阻害剤オラパリブとがんの栄養血管形成を抑制するアバスチン(一般名・ベバシズマブ)の併用療法を1年~1年半、継続します。陰性の場合は、PARP阻害薬ニラパリブを単独で用います。

Q 完全に治すことも可能なのでしょうか。

A 初回の化学療法が著効する場合には肉眼的根治手術が可能であり、化学療法後の分子標的薬による維持療法で、ステージⅢでも60~70%の5年生存率が期待できます。そして、現時点では根治達成率の報告はまだありませんが、完全治癒も相当に期待できます。

がん研有明病院婦人科の瀧澤憲医師
がん研有明病院婦人科の瀧澤憲医師

回答は、がん研有明病院の瀧澤憲医師(婦人科前部長)が担当しました。

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