情報紙100号は羽生の快挙を 震災機に発行、男性の思い

<フィギュアスケート 男子SP ショートプログラム>羽生結弦のショートプログラムの演技=8日、首都体育館(桐原正道撮影)
<フィギュアスケート 男子SP ショートプログラム>羽生結弦のショートプログラムの演技=8日、首都体育館(桐原正道撮影)

フィギュアスケート男子ショートプログラム(SP)に臨んだ五輪2連覇中の羽生結弦(27)は、冒頭のジャンプのミスが響き、まさかの8位発進となった。それでも羽生は気持ちを切り替え、10日に行われるフリーでの巻き返しを狙っている。「結弦君が満足できる五輪になれば」。羽生の地元である東北の縁で、羽生の足跡を伝える情報紙を10年以上発行してきた男性が、羽生にエールを送った。

自閉症長男と同学年

思わぬ不運に見舞われた。冒頭の4回転サルコーが氷上の穴にひっかかり、1回転に。ライバルに後れをとり、肩を落としたが、演技後は「フリー頑張ります」と明るく振る舞った。

節目の100号で五輪3連覇の見出しを-。情報紙「羽NEWS(ハニューズ)」を個人で発行する、金沢市の自営業、坂田俊明さん(62)はこう期待している。

当時小学5年の羽生結弦(左)は学校のスケート教室で、同級生の坂田裕熙さんの手を取り寄り添っていたという=仙台市、平成18年2月(坂田俊明さん提供)
当時小学5年の羽生結弦(左)は学校のスケート教室で、同級生の坂田裕熙さんの手を取り寄り添っていたという=仙台市、平成18年2月(坂田俊明さん提供)

坂田さんと羽生の縁は、自閉症の長男、裕熙(ゆうき)さん(27)が仙台市の小中学校で羽生と同学年だったことから始まった。小学5年のときには、2人が学校のスケート教室でペアになったこともある。スケートが得意な羽生と組ませようという学校側の計らいだったが、羽生は裕熙さんの手を取り、優しく寄り添っていたという。

1号は「世界13位」

「羽NEWS」の発行のきっかけは、東日本大震災だった。震災で坂田さん一家は仙台から金沢へ移住。震災から約3カ月後の平成23年6月、羽生はアイスショー出演のため金沢を訪れ、坂田さんは地元関係者を通じて羽生と面会した。

「忘れるわけないじゃないですか」。裕熙さんのことを覚えているかと聞くと、羽生は笑ってこう応えた。

震災で自宅が全壊した羽生。一時はスケートをやめることも考えたが、演技で被災地を勇気づけようと、全国各地でアイスショーに臨んでいた。

「自分も何かできないか」。羽生の活躍を逐次伝えることが人々の背中を押すと直感した坂田さんは「羽NEWS」の発行を決意。同年10月の第1号で羽生が世界ランキング13位になったことを伝えた。あれから11年。トップアスリートとなった羽生を、坂田さんは「よくぞここまで」と感慨深げに振り返る。

節目の見出しは…

羽生の活躍を伝える情報紙「羽NEWS」1号と99号=坂田俊明さん提供
羽生の活躍を伝える情報紙「羽NEWS」1号と99号=坂田俊明さん提供

羽生と坂田一家の交流は今も続く。裕熙さんは高校卒業後、自立を目指す施設に通っており、そこで作ったギョーザを羽生家に送っている。羽生が「おいしい」と言いながらギョーザを食べてくれていることを、羽生の父から聞いている。

今月3日までに99号となった羽NEWSは、15日ごろに100号の発行を予定している。10日は運命のフリー。坂田さんは「吹っ切れてのびのびとした滑りを見せてくれるのでは」と期待している。(浅上あゆみ)

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