北川信行の蹴球ノート

アジア頂点一過性にしない…神戸が「先行投資」した若手特化コーチ

キャンプで選手を指導するヴィッセル神戸のリュイスコーチ(C)VISSEL KOBE
キャンプで選手を指導するヴィッセル神戸のリュイスコーチ(C)VISSEL KOBE

「アジアナンバーワンクラブ」を目標に掲げるサッカーJ1のヴィッセル神戸が今季から「ヤングプレイヤーデベロップメントコーチ」のポジションをトップチームに設けた。就任したのは、昨季途中までJ3のFC今治を率いていたスペイン人のリュイス・プラナグマ・ラモス氏(41)。1月16日に行われた新加入選手会見で、徳山大樹社長(32)は「アジアナンバーワンは決して一過性(の目標)ではない。ナンバーワンであり続けるためには、若手を引き上げていく必要がある。クラブの中長期的な成長につなげられればというので(リュイス氏を)招聘(しょうへい)した」と意図を説明した。野心的なクラブの未来をつくる役目を任されたリュイス氏が産経新聞の取材に応じ、「ポテンシャルのある選手はたくさんいる。しっかりとチームに貢献できるようにしたい」と抱負を語った。

インタビューに応じるヴィッセル神戸のリュイスコーチ(C)VISSEL KOBE
インタビューに応じるヴィッセル神戸のリュイスコーチ(C)VISSEL KOBE

「ヤングプレイヤーデベロップメントコーチ」は文字通り、若手の成長に特化した専門コーチのこと。育成組織の指導者とは異なり、トップチームに所属している若手の能力を高めることを目的にしている。リュイス氏によると、欧州では一部に同様のポジションを設けているクラブもあるが、日本では神戸がパイオニアとしての事業になるのではないかという。

スペイン・カタルーニャ出身のリュイス氏はまだ10代だった1999年にスペイン1部リーグ、エスパニョールのユースチームで指導者としてのキャリアをスタート。その後、ビリャレアルやエスパニョールのBチームのほか、同国3部リーグ(セグンダB)のUCAMムルシアやエルクレスを指揮し、2020年にFC今治の監督に就任した。若手の指導歴が豊富で、今回、神戸から〝特別なオファー〟を受けたことを「正直うれしかった。神戸は日本、アジアの中でもビッグクラブに入る。J2やJ3で監督をするオプションもあったが、自分の中でプロフェッショナルなキャリアを築いていけると思った」と振り返る。

キャンプで選手に声をかけるヴィッセル神戸のリュイスコーチ(C)VISSEL KOBE
キャンプで選手に声をかけるヴィッセル神戸のリュイスコーチ(C)VISSEL KOBE

では、「ヤングプレイヤーデベロップメントコーチ」の具体的な仕事とは…。リュイス氏はチーム全体がまだシーズン前の段階であることを踏まえて「現段階は全員が同じ練習をしている状態」と断りながら「若手によりパーソナライズしたトレーニングを行わせる。選手たちがより早く成長する環境をつくること」と解説。その上で「ポジションごとにタスクを明確化して練習に取り組む」と方針を話した。

ただ、同じ若手でも早くから試合に出場し続けている選手がいる一方で、なかなか出場機会を得られていない選手もいる。状況は千差万別だ。「なので、年齢の違いはあまり意識していない。トップのチームでプレーしている時間は個々に異なる。欠けているものを補う必要がある。もちろんメンタル面も重要」とリュイス氏。チームを指揮する三浦淳寛監督と綿密に連携を取り、クラブから受け取った個々の選手の情報も活用しながら、パーソナライズを始めているという。

郷家友太、小林友希、山川哲史、中坂勇哉、小田裕太郎、尾崎優成…。次々と将来有望な若手の名前を挙げて「みんなポテンシャルがある」と期待を込めたリュイス氏は「チームには豊富な経験のあるイニエスタのような選手もいる。同時にアカデミー育ちだったり、新たに加入してきた選手もいる。一人一人の選手の能力をマックスに引き上げることが重要。自分としてはユースチームを指導した経験もあるし、トップチームを率いた経験もある。クラブのニーズに応えたい」と意気込みを話した。

指示を出すヴィッセル神戸のリュイスコーチ(C)VISSEL KOBE
指示を出すヴィッセル神戸のリュイスコーチ(C)VISSEL KOBE

昨季のJ1でクラブ史上最高の3位となった神戸は今季のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)に出場する。そこで優勝すれば「アジアナンバーワンクラブ」の目標は達成される。

だが、クラブが見据えるのはさらにその先だ。「ヤングプレイヤーデベロップメントコーチ」の創設は、クラブがアジアの常勝軍団となるための「先行投資」とも言える。重責を担うリュイス氏の手腕が注目される。

会員限定記事会員サービス詳細