ホロコースト「人種問題ではない」 発言の米著名女優、批判殺到しトーク番組出演停止

ウーピー・ゴールドバーグさん=2015年11月、米ワシントン(AP)
ウーピー・ゴールドバーグさん=2015年11月、米ワシントン(AP)

【ニューヨーク=平田雄介】米映画「天使にラブ・ソングを…」などに主演した著名な黒人女優のウーピー・ゴールドバーグ氏(66)が、共同司会を務める米ABCテレビのトーク番組で、ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)を「人種問題ではない」と発言。ユダヤ人が「人種」として迫害された歴史的事実に反するとの批判が殺到し、2週間の出演停止処分を受けた。

ゴールドバーグ氏は1月31日の放送で、ナチス収容所の話題になった際、「ホロコーストは人種問題ではなく、人間の他人に対する非人道的な行いだ」と述べた。他の複数の出演者が異議を唱えたが、同氏は「白人が白人にやったことだ」と強調し、「人種問題」は黒人など有色人種を対象に限るべきだとの姿勢をにじませた。

ゴールドバーグ氏は、政治、社会問題への強い関心で知られ、特に黒人差別について積極的に発言してきた。米国に本部を置く国際的なユダヤ人人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」のエイブラハム・クーパー副所長はAP通信に、これまでのゴールドバーグ氏の姿勢を称賛したうえで、今回の発言は「理解に苦しむ」と述べた。

クーパー氏は今回の発言の背景として、米社会で人種差別という言葉を有色人種を標的にする場合にだけ用いる「人種差別の新しい定義」が広まっていることをあげ、実際の「歴史はそうではないことを教えてくれている」と指摘した。

ユダヤ人大量虐殺の歴史について、米ホロコースト記念博物館は「人種差別はナチスの信条の中心で、ユダヤ人を人種によって定義し、ジェノサイド(集団殺害)をあおった」と指摘している。

ゴールドバーグ氏は2月1日の放送で「失言」を認めて謝罪したうえで、「私が(新たに)得た情報は本当に役に立ち、理解を助けてくれた」と謝意を示した。

ABCテレビは同日、2週間の出演停止処分を発表し、キム・ゴッドウィン社長は声明で「ウーピーに自分の発言が及ぼす影響を考え、学ぶための時間を取るよう求めた」と述べた。

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