福岡市とトヨタが水素利活用で連携協定 脱炭素社会へ

水素社会実現に向け、提携したコマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズの中嶋裕樹社長、福岡市の高島宗一郎市長、トヨタ自動車FC事業領域の濱村芳彦統括部長(左から)
水素社会実現に向け、提携したコマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズの中嶋裕樹社長、福岡市の高島宗一郎市長、トヨタ自動車FC事業領域の濱村芳彦統括部長(左から)

福岡市とトヨタ自動車は7日、脱炭素社会の実現に向け、連携協定を結んだ。水素を空気中の酸素と化学反応させて発電し、モーターを回す燃料電池車(FCV)の導入をはじめ、水素を軸とした脱炭素技術の社会への導入を目指し協力する。市は令和4年度当初予算案に関連経費として約4400万円を計上する。

協定では、FCVの開発や、FCVを使った物流モデルの構築、市施設やイベントでの水素の活用、規制改革に向けた政府への提案などに取り組むとしている。トヨタなど自動車各社が共同出資し、商用自動車への水素活用技術などを研究する「コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ」(CJPT)からも協力を受ける。

4年度には、災害時に避難所などへの電力供給が可能なバス型の移動式発電・給電システム車や、給食配送用にFCVトラック1台を共同で新規開発し、導入する予定。水素を利用することで、エンジン車や非常用発電機と比較し、排気由来の温室効果ガス削減が見込める。

将来的には、ごみ収集用のパッカー車の開発も目指す。福岡市では深夜帯にごみの収集作業を行うため、エンジン音など騒音軽減が課題だった。低騒音で振動も発生しないFCVパッカー車に、これらの解決を期待する。

一連の事業では、市が下水汚泥を原料に製造する水素を使用する。4年度以降は、製造段階の電力も再生可能エネルギーを使用するなどして脱炭素化を徹底する。

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今回の協定は、高島宗一郎市長と、トヨタの豊田章男社長とのトップ会談の成果だ。

昨年11月、同市は岡山県の岡山国際サーキットで開かれた自動車レース「スーパー耐久シリーズ」で、豊田氏がオーナーを務め、ドライバーとしてハンドルも握る「ROOKIE Racing」に水素を提供した。高島氏はサーキットに足を運び、豊田氏と直接、水素技術の社会実装に向けた連携について意見を交わした。

CJPTの中嶋裕樹社長は7日の記者会見で、今回の事業について「取り組みをサステナブル(持続可能)かつプラクティカル(実用的)なものにするように」と豊田氏から指示を受けていると明かした。

脱炭素は全世界、全産業が対応を迫られる課題だ。

トヨタ側としては、カーボンニュートラル実現に向けた選択肢の1つとする水素の利活用を進める上で、技術を検証できる実地を得られるメリットがある。

市にとっても、水素技術の蓄積、普及は市民生活の質を向上させるだけに留まらない意義がある。それは、九州大箱崎キャンパス(福岡市東区)跡地の再開発だ。

新型コロナウイルス禍などで、事業者公募は延期されているが、市は都市再生機構(UR)の整備分とあわせ、約50ヘクタールの広大な土地を一体開発し、大胆に最新技術を導入する街づくりを構想する。「まっさらな状態からつくられた完全なスマートシティ」(高島氏)を目指す上で、ICT(情報通信技術)だけでなく、水素をはじめ脱炭素関連の知見も必要となるのは間違いない。

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また、トヨタは今回の協定によって、技術面とは別に越えるべき壁の解消を狙う。水素エネルギーは、供給拠点などの面でガソリンなど既存燃料に比べ、厳しい規制の下にある。トヨタのFC事業領域の濱村芳彦統括部長は会見で、水素技術普及への課題として「新しいことをすれば、(既存規制などの関係で)うまくいかないこともある。また、そもそも制度がないこともある」と指摘した。

その点、国家戦略特区に指定される市は、国への緩和を提案することが可能で、これまでもビルの高さ規制など多くの成果を挙げてきた。また、高島氏は直近でも、委員を務めるデジタル臨時行政調査会で、実例をもとにした提案によって国を動かした。トヨタ側は、水素社会の実現に向け、規制緩和に向けた「ドリルの刃」を自認する高島氏の突破力や実行力に期待したとみられる。

今回の協定が机上の空論ではなく、具体的な水素社会実現への推進力となるか否かは4年度以降、それぞれどのような成果を挙げられるかにかかっているといえる。(中村雅和)

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