衆院は8日、緊迫化するウクライナ情勢について「深く憂慮する」などとした決議案を賛成多数で採択する見通しだ。だが、決議案はロシアを名指しで非難するのは避け、ロシアへの配慮をにじませる。ウクライナの国境付近に軍隊を大規模展開するロシアの不当性に目をつぶるような姿勢は、ロシアによる不法占拠が続く北方領土の返還を求める日本の外交方針に疑念を持たれかねない。
決議案は「ウクライナをめぐる憂慮すべき状況の改善を求める決議案」。超党派の日本・ウクライナ友好議員連盟(会長・森英介元法相)が中心となって作成した。ウクライナ情勢に関し決議案は「いかなる国も力による現状変更は断じて容認できない」と強調。「わが国は、ウクライナの主権と領土の一体性を一貫して支持」とも明記した。その上で、政府に対し「あらゆる外交資源を駆使して、ウクライナの緊張状態の緩和に全力を尽くす」ことを求めている。
一方、ウクライナ情勢不安定化の理由については「国外勢力の動向」との表記にとどめた。ロシアという国名は、ウクライナの位置を「EU(欧州連合)とロシアの間」と説明する形で言及した。議連幹部は「『生ぬるい』という意見はあったが、親露派の議員もいる。どちらにもある程度理解してもらえる〝最大公約数〟の形だ」と話す。別の議連幹部は「決議文を読めばロシアを指すことは分かる」と語る。