FIGHT10 いきもの巡り

猛獣の昼寝には理由がある 茨城県日立市かみね動物園

肉の入った段ボール箱に手をかけるトラの「サワ」(日立市かみね動物園提供)
肉の入った段ボール箱に手をかけるトラの「サワ」(日立市かみね動物園提供)

動物園に来られるお客さまからよく、「ライオンは寝ていてばかりでつまらない」といわれることがあります。確かにライオンやトラは昼間ゴロンと横になっている時間が多いのはご指摘の通りです。

ドキュメンタリー番組などで取り上げられる肉食動物が颯爽と狩りをする姿とのギャップに、違和感を覚えるのも無理はありません。しかし、狩りに膨大なエネルギーを費やす彼らからすれば、それ以外の時間は無駄な労力は使わないに越したことはないのです。狩りは夕方から早朝にかけて行われるのに対し、まさに日中はエネルギーを蓄える時間といえます。

しかし、一方でお客さまの声にも耳を傾けたい思いがわれわれにもあります。そこで動物園では展示場に肉を入れた段ボール箱や、プラスチックボールなどを入れ、彼らに遊んでもらう姿を公開しています。

また、サルやクマなど雑食性の動物たちは逆に日中餌を求めて元気に動き回ります。動物園では動物たちの食事をいつも適正な時間に与えていますが、すぐ食べられるような餌の出し方だと、あっという間に定量を食べきり、それ以外は動物にとって退屈な時間となってしまいます。

餌の入ったボールに興味を示すツキノワグマの「ナオ」(日立市かみね動物園提供)
餌の入ったボールに興味を示すツキノワグマの「ナオ」(日立市かみね動物園提供)

このため、野生の条件下で餌を探す行動を飼育中でも取り入れようと、わざとあちらこちらに餌を隠します。「動物がかわいそうだ」との声もありますが、なるべく野生の環境に近づけることで、彼らの退屈な時間を減らせるし、その探索行動を見ているお客さまも楽しむことができます。

このように遊具を入れたり、餌の出し方を工夫したりする取り組みのことを、「環境エンリッチメント」と呼びます。動物福祉の観点から、彼らが幸せに暮らせるよう、外的刺激を加えつつ、野性下の環境に近づける工夫のことで、結果的に動物もより行動的になり、それを観察するお客さまも彼ら本来の姿を見ることができるわけです。

会員限定記事会員サービス詳細