波乱のスケート人生、集大成に 日本選手団旗手の郷亜里砂

旗手を務める郷亜里砂=4日、国家体育場(桐原正道撮影)
旗手を務める郷亜里砂=4日、国家体育場(桐原正道撮影)

スピードスケート女子の郷亜里砂(ごうありさ)(34)が旗手の大役を果たした。ノルディックスキー複合男子の渡部暁斗(あきと)(33)とともに日の丸を掲げ、手を振りながら日本選手団を先導。自身2度目となる五輪を輝く笑顔でスタートさせた。

一度は現役引退したものの、北京を目指して復帰したベテランの競技人生は、紆余曲折の連続だった。

北海道東部、オホーツク海に面した別海町で生まれ育ち、自宅近くのリンクで3歳のときからスケートに慣れ親しんだ。

自身もスケート経験がある父親の季良(ときよし)さん(61)が伝え続けていたのが、「皆と同じことを同じときにやっても勝てない」という考え方だ。親子はいち早く、1周の長さが通常リンクの4分の1程度のショートトラックを使った練習を取り入れた。当時は珍しい「二刀流」だが、これがコーナリング技術の上達につながった。

進学した山梨学院大では川上隆史監督(69)の指導のもと、全日本学生選手権のスプリント女子総合を制するなど頭角を現した。しかし、卒業後はリーマン・ショックの影響もあって所属先が定まらず、山口県の国体強化選手として2年活動。その後は、北海道の企業を経由し、愛媛県のイヨテツスピードクラブに所属して活動を続けてきた。

前回2018年の平昌五輪は500メートルで8位に終わり、大会後に引退を決めた。「精神的にも肉体的にもボロボロだった」と季良さん。そんな郷をリンクに引き留めたのは、かつての恩師だった。

日本スケート連盟の要職に就いていた川上さんが、郷をショートトラックのジュニア担当コーチに指名。イヨテツスピードクラブでも子供たちを指導することになった。

そこで目にしたのは、ひたむきに練習する子供たちの姿。季良さんは「あれで救われた」と振り返る。気力がよみがえり、自らもリンクで滑りだした。「ジュニア選手の2倍は練習していたようだ」と川上さん。引退宣言から1年ほどで現役復帰を決意した。

今年1月29日に東京都内で開催された、日本選手団の結団式では「恩返しの気持ちを込めてレースにすべてをかけ、笑顔で終われるオリンピックにしたい」と意気込んだ。出場は13日の500メートル1本。34歳が集大成の滑りを見せる。(本江希望、北京 橋本謙太郎)

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