スマホで悩む各国記者 五輪アプリに監視疑惑

北京冬季五輪公式アプリ「MY2022」の画面=2日、北京(共同)
北京冬季五輪公式アプリ「MY2022」の画面=2日、北京(共同)

【北京=桑村朋、西見由章】北京冬季五輪では大会組織委員会の記者会見がライブ配信されるなど、パソコン(PC)やスマートフォンは取材の必需品だ。ただ、海外メディアの中には個人情報の詰まった私有スマホを置いてきたり、データを消して持ってきたりした人もいる。中国当局がネット通信や五輪のアプリを通じ、監視やスパイ行為を行う懸念があるためだ。

「出発前にスマホのバックアップを取り、データを消して持ってきた」と明かすのは、米UPI通信のカメラマン、リチャード・エリスさん(61)。北京で保存したデータは帰国後に再び消し、出発前のバックアップデータを復活させるといい、「私は標的にされないかもしれないが、各所に監視カメラがある国で警戒するに越したことはない」と語った。ノルウェー紙の男性カメラマンは「会社が支給したまっさらな状態の端末しか持ってきていない」という。

北京五輪では、会場内のインターネット回線で中国国内の規制が解除され、通常は規制対象のグーグルやツイッターの閲覧もできる。中国政府や組織委員会は「クリーンさ」をPRするが、欧米のオリンピック委員会(五輪委)は警戒している。

英紙デーリー・メールは先月末、米、英、カナダ、ドイツなど欧米7カ国の選手やコーチら約1000人が、北京に使い捨てのスマホを持ち込む方針だと報じた。各国の五輪委は、私有のスマホやPCを持ち込まないよう促している。

また、大会関係者らは中国で開発された五輪公式アプリ「MY2022」上での健康状態の報告などが求められている。スマホへのダウンロードは事実上の義務で、名前や住所、顔写真など多くの個人情報の登録が必要となる。

カナダ・トロント大の研究所「シチズン・ラボ」の調査では、データ転送時の暗号化がなされないなど脆弱(ぜいじゃく)性が発覚。現在地や電話、メールの監視が容易にできる状態という。スイス紙の男性記者は「私有スマホにダウンロードした」としつつ、「帰国したら勤務先の技術者に端末をクリーンにしてもらう」と話す。

サイバーセキュリティーに詳しい大阪大の猪俣敦夫教授は「アプリ上の通信や入力情報は全て記録されていると考えていい」と指摘。端末に不正アクセスする「バックドア(裏口)」を仕掛ける可能性については「中国にとり露見したときのリスクが大きい」としながらも、未承認アプリも入れられる基本ソフト(OS)を採用する携帯は「危険性がある」と話している。

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