北川信行の蹴球ノート

三浦カズとイニエスタ、レジェンド2人に共通する「働く理由」

鈴鹿への入団会見後、背番号11のユニホームを手に記念撮影に応じる三浦知良=31日©鈴鹿ポイントゲッターズ
鈴鹿への入団会見後、背番号11のユニホームを手に記念撮影に応じる三浦知良=31日©鈴鹿ポイントゲッターズ

54歳の元日本代表FW三浦知良が、Jリーグ入りを目指す日本フットボールリーグ(JFL)の鈴鹿ポイントゲッターズに期限付き移籍した。国内最高峰のJ1から数えて実質4部に相当するJFLを新天地に選んだ三浦が1月31日にオンラインで行われた入団会見で強調したのは、「情熱」と「成長」だった。同日にオンライン囲み取材に応じたJ1ヴィッセル神戸の元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタも「モチベーション」と「成長」が現役でプレーする原動力となっていることを明かした。なぜ、年齢を重ねても第一線で働き続けるのか。レジェンド2人のコメントから見えてくるものが、あるのではないだろうか。

情熱燃え上がらせる

11の番号がついたビブスをつけて練習する三浦知良=三重交通Gスポーツの杜鈴鹿(斉藤友也撮影)
11の番号がついたビブスをつけて練習する三浦知良=三重交通Gスポーツの杜鈴鹿(斉藤友也撮影)

16チームがホーム&アウェー方式でリーグ戦を戦うJFLの試合数は年間30試合。その点を踏まえ、三浦は31日の会見で「30試合90分、全部出たいのが正直なところ。選手としては全試合に出て、(得点は1試合1ゴールとなる)30点ぐらい取りたいという思いでやっている」と出場機会を渇望していることを明かし、「(目標のゴール数は)もちろん、どのくらい試合に関われるのかというのにかかっている。相手も(2月末に誕生日を迎える)55歳の選手に(点を)取らせたくないと思っているだろうし、それでも取りにいく気持ちがないと、取れないと思っている」と変わらぬゴールへの執念をのぞかせた。

J1で戦った昨季の横浜FCで三浦が出場できたのは、リーグ戦はわずか1試合だけ。実質4部に移ったからといって、出場が確約されているわけではない。Jリーグと比べるとJFLは粗削りな若い選手が多く、プレー自体も荒くなりがちで、けがのリスクが高まると指摘する声もある。

鈴鹿への入団会見後、ユニホームを着てポーズをとる三浦知良=31日©鈴鹿ポイントゲッターズ
鈴鹿への入団会見後、ユニホームを着てポーズをとる三浦知良=31日©鈴鹿ポイントゲッターズ

そうした両リーグの差については、三浦も「Jリーグとは違ったサッカーがJFLにあるのは分かる。技術がJリーグほど高くない分、ハードワークが求められる」と十分に理解している。その上で「ただ、Jリーグでも当然、選手はハードワークしている。根本的には、サッカーというものは変わらないと思っている。勝つ厳しさはJFLでもJ1でも変わらない。環境の違いがあったり、(全体のプレーが)フィジカル的になってしまったりするのは想定内。グラウンドに入ったときに、厳しいものを感じるかもしれないが、やってみないと分からない」と前を見据えた。

会見で報道陣から「鈴鹿で何を見せるのか」と問われると、三浦は「ずっとサッカーに向き合ってきた気持ちはこれからも変わらない。何かを変えるというよりも、今までやってきた情熱を鈴鹿という新しい場所で、燃え上がらせられたらと思う。情熱をみなさんに伝えられたらと思う」ときっぱり。「チームの成長、僕自身、チームのみんなと成長していきたい。新しい自分を見つけられたらと思う」と希望を口にした。

まだまだ成長したい

ヴィッセル神戸の神戸キャンプでトレーニングに励むイニエスタ=31日(C)VISSEL KOBE
ヴィッセル神戸の神戸キャンプでトレーニングに励むイニエスタ=31日(C)VISSEL KOBE

こうした三浦の新たな挑戦について、同日にオンラインで取材に応じた神戸のイニエスタは「年齢的に今のところ、(37歳の自分が)カズ選手に追いつけるとは思っていない。自分はこの年になっても日々練習に来たり、チームメートと練習したりすることに、モチベーションを感じられている。まだまだ成長したいと思えている。環境に恵まれてサッカーをする意欲を感じられる間は(現役を)続けたい」と自身の思いを言葉にした。

イニエスタがスペインの名門バルセロナから神戸入りしたのは2018年。世界的な新型コロナウイルス感染の影響で、このオフは家族とともに日本ですごし、今季が神戸での5シーズン目となる。

オンライン囲み取材に応じるヴィッセル神戸のイニエスタ=31日(C)VISSEL KOBE
オンライン囲み取材に応じるヴィッセル神戸のイニエスタ=31日(C)VISSEL KOBE

「来たときから、神戸の(アジアナンバーワンのクラブになるという)プロジェクトに加わりたい、成功させたいと思っていた。個人レベルでも、家族レベルでも自分のホームと呼べる環境を見つけ、生活に満足している」と満ち足りた神戸暮らしを送っていることを明かしたイニエスタは「何事も大きなことを成し遂げるには時間がかかる。クラブは努力を続け、チームとしては(アジア・チャンピオンズリーグに挑むという)ポジティブな場所にある。ただ、昨年勝ち取ったものは、昨年の努力の結果。今年はまたゼロから始まる。今年成し遂げるには、今年努力しなければならない」と語気を強めた。

ヴィッセル神戸の神戸キャンプでトレーニングに励むイニエスタ=31日(C)VISSEL KOBE
ヴィッセル神戸の神戸キャンプでトレーニングに励むイニエスタ=31日(C)VISSEL KOBE

一方、三浦も昨季のJFLで4位となった鈴鹿が、今季はJリーグ入りを本格的に見据える1年になることを踏まえて「大きな仕事だと思うし、やりがいも大きい。いい緊張感で、自分の中で新たな気持ちで戦えるのを楽しみにしている」とチームの飛躍を手助けする意気込みを示した。

自身の「成長」の可能性と衰えない「意欲」。そして、組織への貢献が目に見える形で分かる「やりがい」。三浦とイニエスタが大切にしている〝働くための要素〟は、サッカー界に限った話ではない気がする。

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