話の肖像画

真矢ミキ(30)未来の自分に失礼のない生き方を

過去1年を通じ「最も輝いている人、宝石が似合う人」に贈られる「日本ジュエリーベストドレッサー賞」の50代部門を受賞したばかり=1月13日
過去1年を通じ「最も輝いている人、宝石が似合う人」に贈られる「日本ジュエリーベストドレッサー賞」の50代部門を受賞したばかり=1月13日

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《きょう1月31日は、真矢さんの58歳の誕生日。そしてこの日は大好きだった父、佐藤隆二さんの命日でもある》


こうして振り返ると、なかなか波瀾万丈(はらんばんじょう)な人生を送ってきたと思います(笑)。全速力で駆け抜けた10代から30代。多少は物事が見えるようになった40代。そして50代の今は、ときには立ち止まって周囲を見まわしてもいい、と思うようになりました。私は最下位も経験したランナーですが、ずっと走り続けてきたことは間違いないです。

私は今の、自分の年齢を、愛しています。年齢を重ねることは、本当に最高の学びですね。心弾む思い、悔しい思い、恥ずかしい思い…。さまざまな経験をしてきた自分を丸ごと受けいれ、試行錯誤してようやく肯定できるようになったのは、最近のことです。

確かに年齢を重ねると、肉体的にできないことが増え、記憶力も低下し、せりふを覚えるのも、時間がかかるようになった気がしています。でも年齢を重ねるとはどういうことか、88歳で亡くなった母が間近で見せてくれましたから。母は「60代が一番、楽しかった。もう一度、戻りたいくらい」と常に言っていましたから、60代でどんな景色が見られるのか、母の言葉の真意を知るためにも、楽しみにしています。


《年齢にあらがうような「アンチエイジング」という言葉は好きではない。真矢さんは、前向きに年齢を重ねる「ハッピーエイジング」と表現する》


50歳を過ぎてある意味、開き直ったんでしょうね。40代の頃は、世間で「美魔女」がもてはやされていたこともあって、もちろんブームに乗せられたわけではないのですが、成熟した大人になりたい気持ちと、若くありたい気持ちが交錯し、多少は揺れていた気がします。でも50代になると、人生経験とも相まって、楽しいことが増えた、と思います。そして潔く余分なことを捨てる勇気も。

仕事に対する姿勢も、50代から大きく変化したように思います。自意識をひとまず横に置いて、仕事の現場に行ったら、まず自分に求められる役割を全うする。半世紀生きて多少、余裕が生まれたのかもしれません。

私は「質の良い」という言葉が好きです。年齢を重ねた今、多くなくていいので質の良い物に囲まれ、質の良い人たちと深く、質の良い仕事をしたい。それには、自分が質の良い人間に一歩でも近づく努力をし続け、そこに見合った人間にならなくてはいけないと思っています。やはりどの職でも、いいお仕事をされている方って、常に情熱を持って丁寧に挑戦を続けています。


《今年で芸能生活41年。意識して「普通」の感覚を大切にしている》


いただいた役を離れたら、私はごく普通の人間でありたい。これは「普通が一番」が口癖だった母の影響だと思いますが、普通の暮らしを送ることは私の喜びですし、生活感を忘れないことが、さまざまな役を演じる上でも、入り口になっていると思います。そしていくつになっても、どんな状況にあっても、「今」の自分を愛し、育て、未来の自分に、失礼でない生き方をしたいです。でもまだまだ私は、周囲から吸収すべきことが山のようにあります。

なので自分の足跡や、実績を振り返るのは、人生が終わる瞬間でいいと思っています。最期まで、この体に何を刻み、何をしみ込ませるか。人との出会いを大切に、格好悪くても「去年より今年、昨日より今日」と、いくつになっても鮮度を失わず、歩み続けたいです。(聞き手 飯塚友子)=明日から落語家、桂文珍さん

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