Netflixは2022年、「日本発」で“爆速”のコンテンツ開発を目指す

これまでにNetflixは日本発で「全裸監督」や「今際の国のアリス」などの人気作を生み出しているが、2021年に全世界で1億4,000万世帯以上が視聴した韓国発「イカゲーム」を超えるようなヒット作はまだない。こうしたなかネットフリックスの日本法人は、攻めに転じたコンテンツ戦略をどのように打ち出していくのか。日本のクリエイティブを統括する坂本和隆に、その具体策を訊いた。

ネットフリックスの日本法人がこれまでの6年間に開発した日本発のコンテンツの数は、90本に上る。2015年に日本でサービスを開始して以降、その数は年々増えている。これは企画から制作、撮影、編集、配信まで、それぞれの制作過程でスタジオとしての機能を強化し、内製化を進めてきた結果である。「全裸監督」や「今際の国のアリス」など、世界的な人気を集めた作品も生まれている。

それでは2022年以降は、いかに新しい作品を企画・制作し、ヒットにつなげていくことになるのか。全世界配信される日本発のコンテンツは「ジャンルの多様化」がキーワードのひとつになる。ネットフリックスのコンテンツ・アクイジション部門バイス・プレジデントの坂本和隆は、「日本国内の会員数は明らかに増え続けていることがその背景にある」と説明する。

「2020年9月に日本の会員数が500万人を超え、会員の年齢層も広がっています。最新の会員数を発表する予定はいまのところ未定ですが、オリジナル作品においてフィルム、ドラマ、アニメ、バラエティなど偏りなくジャンルを広げていくことが会員数増加の説得材料になると思っています」

2021年11月に開催した新作発表会「Netflix Festival Japan」では50本の新作を発表し、ドラマからフィルム、バラエティまで幅広いジャンルのオリジナルコンテンツが発表された。福田雄一監督による映画『赤ずきん、旅の途中でしたいと出会う』(2023年)や、鈴木おさむ企画・脚本・プロデュース、白石和彌監督によるドラマ「極悪女王」(時期未定)、元テレビ東京の佐久間宣行がプロデュースする千鳥MCのトーク番組「トークサバイバー!」(2022年3月)など、これまで日本の映像業界を支えてきたクリエイターの名前が目立つ。

さらに、映画『万引き家族』で18年にカンヌ国際映画祭の最高賞であるパルム・ドールを受賞した日本を代表する映画監督・是枝裕和と、新たなオリジナルコンテンツを制作していることも明かされた。是枝がショーランナーを務める連続ドラマと、是枝自身がメガホンをとるフィルムのふたつのプロジェクトが進められている。

いずれもテーマは人間ドラマだ。連続ドラマは22年中に配信されることが決定し、小山愛子による人気コミック『舞妓さんちのまかないさん』を映像化する。ヒットメーカーの川村元気が企画し、是枝が起用した若手の監督らと組みながら、人材発掘を含む新しい試みになる。

世界のローカルチームの知見と人材を活かす

日本発のコンテンツ開発が順調に進められている理由は3つある。ひとつ目はNetflixだからできることがあるからだ。それはローカルチームとの連携である。アジア太平洋地域では日本がローカルチームが置かれた最初の国で、その後6か国でローカルチームが組成されている。本国をはじめ、欧州、ラテンアメリカ地域を含めるとその数は26に及ぶ。

それぞれ連携を図ることにより、クリエイティブ表現の選択の幅が国内にとどまらなくなるのだ。それにより、世界水準の演出を実現できる。最高の知見や人材リソースを活かしながら制作できる点は、Netflixならではの強みだろう。例えば、VFXを使った水のエフェクトを表現するには、どこの国のチームがベストなのか、といった具合だ。VFXの観点から見どころが多い「今際の国のアリス」をはじめとする日本発のオリジナルコンテンツでは、各国のローカルチームと技術の連携が図られたという。

ふたつ目の理由は人材が集まり始めていることだ。日本発のコンテンツを増強していくなかで、実写からアニメまでプロデュース力のある人材の充実は必須条件といえる。

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