Netflixは2022年、「日本発」で“爆速”のコンテンツ開発を目指す

ネットフリックス日本法人のプロデューサーチームは立ち上げ当初は坂本を含む数名のみだったが、現在は実写が5名、アニメも5名の総勢10名に増えた。20年と21年に新たに加わった実写作品担当プロデューサーには、映画『シン・ゴジラ』『進撃の巨人』などが代表作の佐藤善宏や、元WOWOWでドラマ「コールドケース 〜真実の扉〜」などを手がけてきた岡野真紀子の名前が並ぶ。

この10名のプロデューサーそれぞれが、企画開発を軸にさまざまな日本の映像業界人と議論を進めている。先の“是枝プロジェクト”のきっかけも、坂本と是枝との約2年前の対話だった。「日本の映像業界を発展させるにはどうしたらいいのか」。そんな思いを是枝とも共有しながら、多岐にわたりディスカッションを積み重ね、Netflixだからできることの両方を引き出す作品づくりを進めているという。

3つ目の理由は素早い判断にある。ここ3年ほど、さまざまな企画が持ち込まれる機会が増えているというが、坂本は「その場か、もしくは数日以内にお答えしています。ぼく自身は業界最速を目指しています」と言い切る。

それは過去の経験から学んだことだった。「以前、スタジオに企画を持ち込む立場だったこともあり、何カ月も返事が戻ってこなかったのは正直つらかった。その気持ちがわかるので、なるべく早めに返答し、お断りするときは理由も伝えています」

実はこのスピード感の遅さは、日本が国際的なコンテンツ開発を進めてきたなかで弱点でもあった。実際に「日本は他国に比べて返答が遅い」と海外のコンテンツ企業から指摘されることは多く、国際コンテンツ流通マーケットの現場では“常識”とされている。

日本の組織文化は不確実性を回避する傾向が強いので、こうした動きの遅さは仕方ない側面もあったかもしれない。だが、国際競争力を向上するには、より素早い決断が欠かせない。

ネットフリックス共同最高経営責任者(CEO)のテッド・サランドスも、日本法人の対応のスピード感を認めている。「これまでの投資が着実に実っているのは、坂本がリードしながらチームが成長していることも大きい」と、サランドスは語っている。Netflixのコンテンツ制作体制は、本国の方針に基づきながらローカルチームにある程度の裁量が任されていることからも、判断力の早さは重要な意味をもつ。

これらの戦略を“爆速”で進めることで、ネットフリックスの日本法人は日本発のコンテンツの幅を広げ、ヒットにつなげていく好循環を生み出そうとしているのだ。

「日本らしさ」の先にグローバルヒットあり

それでは、これまでの成功体験を今後の作品づくりにどのように生かしていくのだろうか。例えば韓国発の作品は、もともと国内だけでなくアジア市場で幅広く支持されてきた。このためネットフリックスの韓国チームは、アジア市場向けとグローバル市場向けの両軸でコンテンツ戦略を進めることにも重きを置いている。こうして日本をはじめアジアで人気を集めた作品の代表例が『愛の不時着』であり、グローバルで支持された代表例が『イカゲーム』だ。

これに対してネットフリックスの日本法人にとって、一定規模の市場がある日本でのヒットは欠かせない。日本の視聴者は自国の作品を好む傾向が他国に比べて強く、国内で支持されるコンテンツの開発は避けて通れないからだ。韓国と同じ戦略をとることが正しいとは限らず、日本独自のコンテンツ戦略が必要になってくる。

それでは、日本の視聴者を満足させながら世界へと支持を広げていく、日本のNetflixならではの独自戦略とは何か。

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