WHO緊急事態宣言から2年 ウイルスとの共生は不透明

スイスのジュネーブにあるWHO本部(共同)
スイスのジュネーブにあるWHO本部(共同)

【ロンドン=板東和正】世界保健機関(WHO)が2020年1月に新型コロナウイルスに関する「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言してから30日で2年がたった。世界でワクチン接種が進む中、新変異株「オミクロン株」の重症化率が低いとして行動規制を緩和する国が相次いでいる。ただ、さらなる新変異株の出現が懸念されており、「ウイルスとの共生」が早期に実現できるかは不透明だ。

米ジョンズ・ホプキンズ大の集計で、新型コロナの累計感染者数(30日時点)は世界全体で3億7000万人を超え、累計死者数は約565万人となった。

感染力が高いとされるオミクロン株が流行した影響で、昨年12月中旬以降、新規感染者数は急増。WHOによると、今月17~23日の1週間に報告された新規感染者数は世界全体で約2280万人と過去最多を記録した。昨年12月6日からの1週間に比べると5倍以上の規模だ。

一方で、ワクチン接種の進展やオミクロン株の重症化率が低い水準にとどまっていることから、1週間の新規死者数は昨年10月以降、4万~5万人台で推移し急増は抑えられている。

こうした状況から、欧州諸国では経済活動の正常化を優先し、新型コロナの危機水準を「パンデミック(世界的大流行)」から「エンデミック(地域的流行)」に引き下げようとする動きが目立つ。新型コロナがインフルエンザのように特定の地域で普段から繰り返し発生する状態に移行したと捉え、行動規制を緩和していく考えだ。

英政府は今月27日から南部イングランドで公共交通機関や映画館などでのマスク着用義務を撤廃。デンマーク政府も26日、国内での行動規制を2月1日に廃止するとの方針を示した。同国のホイニケ保健相は「2月から新型コロナは社会的に深刻な病気という分類でなくなる」と強調した。

しかし世界では、ワクチン接種率が10%に満たない国がアフリカなど30カ国以上あり、新たな変異株が発生するリスクもある。英紙デーリー・メールなどによると、キプロスの研究者が重症化リスクが高いデルタ株とオミクロン株の両方の特徴を併せ持つ新たなウイルス感染を確認した。

アベイクーンWHO新型コロナウイルス特使は「現時点でパンデミックはまだ終わっておらず、行動規制を急速に撤廃することは賛成できない」と警告する。

規制解除に踏み切った英国内でも慎重意見は多く、ロンドンでは着用義務が解除された後も店舗や交通機関でマスク姿が目立つ。英調査会社ユーガブが21日に実施した世論調査では、屋内でのマスク着用義務の撤廃に29%が「強く反対」し、「強く賛成」の19%を大きく上回っている。

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