記者発

「子ども食堂」つながるご近所さん 堺支局長・藤谷茂樹

数年前から子供の貧困対策の一つとして「子ども食堂」が注目されていて、私が取材を担当する地域でも、ボランティアで運営される食堂が増えている。運営者らに話を聞くと、「貧困対策」とは少し違った観点から地域に必要となっていることを知った。

堺市堺区の錦綾(きんりょう)校区では4年半ほど前に、地域の福祉委員会が母体となって食堂が開設された。運営スタッフには25人ほどが参加し、月1回、夕食を提供。運営の中心的な役割を担う信田禮子(しだ・れいこ)さん(77)によると、新型コロナウイルス禍の影響で食堂形式から弁当の持ち帰りに切り替えたものの、利用する子供は開始当初から増え続け、今では90人近くになるという。

「4年生の子たちは、お弁当を受け取るのがなぜかブームになっていて」と信田さん。子供たちはみんなで同じ食事をとるイベントと捉えているようで、「食事を渡すだけでなく、スタッフと一緒に帰ることも。こうした交流から子供たちの関係ができてきた」と話す。今年1月から同市西区で月1回ペースの子ども食堂を始めた岩本辰也さん(45)も「地域の安心できる場所として、つながっていきたい」と思いは一緒だ。

「食事を与える」ことが目的ではなく、「子供たちのことを見守る」地域にすることが主眼なのだ。

同市社会福祉協議会では、こうした運営者への支援として、家庭の未利用食材を集めて配布するフードドライブの実施、規格外の食品など寄贈を受け提供するフードバンクの紹介などを行っている。社協によると、市内での実施団体は5年ほど前に7件だったが、今年1月には9倍以上の65件に増加。担当者は「昨年後半に感染状況が落ち着いたことで、立ち上げに関して多くの相談が寄せられた」と、さらに増える兆しだ。

核家族化で家庭が小さくなり、地域とのつながりも薄れていると言われる。そこで失われつつあるのは「斜めの関係」だろう。子供にとって同年代との横のつながりとも、親や教師の縦のつながりとも違う。近いけれど、押しつけを感じない存在。まさに、近所に住むおじちゃん、おばちゃんのことではないか。

子ども食堂は、こうしたおじちゃん、おばちゃんがいる場になろうとしている。

【プロフィル】藤谷茂樹

平成17年入社。京都総局、大阪経済部、福井駐在などを経て、令和3年4月に堺支局長。大阪の堺・泉北地域を担当している。

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