あらゆる生活排水を「完全に再利用」する計画が、水不足の米国で動き始めた

異例の大干ばつに見舞われてきた米国の西部で、家庭や企業から出る生活排水を完全にリサイクルして使う計画が動き始めた。なかでも水を周辺の地域からの“輸入”に依存している都市では、水の完全な再利用が気候変動へのリスクヘッジにもなると期待されている。

TEXT BY MATT SIMONTRANSLATION BY TOMOYO YANAGAWA/TRANNET

WIRED(US)

砂ぼこりが舞うサンディエゴの丘の上。無数のタンクやパイプ、シリンダーが連なる非常に複雑で騒々しい装置の中を、“未来の飲み水”が巡っている。このノースシティ水再生プラントでは、普通ならとても飲めたものではないような廃水が、不純物をいっさい含まない純粋な液体へと生まれ変わっているのだ。あまりに純粋すぎるので、追加処理せずに口にすると体に悪い影響を及ぼすほどだという。

このプラントの浄水システムは、まずオゾンの力で廃水中のバクテリアやウイルスを破壊する。続いて水は粒状活性炭を詰めたフィルターに送り込まれ、有機固形物が取り除かれる。その後、微細なろ過膜を通過し、残りの固形物や微生物が除去されるのだ。

「膜の細孔は非常に小さく、超高倍率の顕微鏡でしか見ることができないほどです」と、サンディエゴ市の「ピュア・ウォーター・サンディエゴ」の副ディレクターのエイミー・ドーマンは言う。ピュア・ウォーター・サンディエゴは、水を遠くから運んできている現状を改善すべく発足したプロジェクトだ。「これは水の分子だけを通すろ過装置と言っていいでしょう」

しかし、ここで終わりではない。確実に不純物を除去するために、次のステップでは水に紫外線を照射し、微生物やその他の微量汚染物質を残らず除去するのだ。

これにより最高純度の水ができあがるわけだが、あまりに純粋なので最後にミネラルを加えて“調整”する。そうしないと、水は水道管の銅を溶かし出してしまうのだ。また調整前の水を飲んでしまうと、体内の電解質をスポンジのように吸収してしまう。

深刻化する水不足

飲料水を生み出す方法としては複雑すぎると思うかもしれない。だが、そうせざるを得ないのは、米西部が非常に複雑な気候危機に直面しているからだ。

サンディエゴをはじめとする南カリフォルニア全土は、これまで北カリフォルニアとコロラド川の水に大きく依存してきた。サンディエゴはその供給ラインの末端に位置している。

コロラド川はカリフォルニア州の住人以外にも、コロラド州やワイオミング州、ユタ州、アリゾナ州、ネバダ州、ニューメキシコ州に住む4,000万人ののどを潤している。ところが、近年は未曾有の大干ばつに見舞われている。このまま温暖化が進めば、水不足がさらに深刻化することは明らかだ。

したがってサンディエゴ市は、少ない水を最大限に活用する方法を見つける必要がある。ピュア・ウォーター・サンディエゴのプロジェクトは、家庭や企業から出る廃水(つまり流し台やシャワー、トイレ、洗濯機などで使われた水)をリサイクルすることで、2035年までに同市の水の40%以上を地域でまかなえるようにしようという試みだ。

「水の供給元の多様化に務めています」と、サンディエゴ市長のトッド・グロリアは言う。「市民ははるか遠くから送られてくる水に頼らざるをえない状況にあり、市はこの問題をなんとか解決しなくてはならないのです」

ほかの州でも広がる取り組み

このプロジェクトはまだ始動したばかりで、ノースシティ水再生プラントの浄水システムは現在のところ実験場という位置づけだ。技術者たちはさまざまな種類のろ過膜を試し、施設に送られてくる廃水に最適なものを模索している。

またサンディエゴ市は、道路を隔てた向かい側にさらに大きな浄水施設を建設している。2025年に稼働予定の新施設では、最終的に1日あたり3,000万ガロン(約1億ℓ)の水の生産が見込まれるという。

計画の第2段階では敷地内にさらに多くの施設が増設されることになっており、完成すると再生水の生産量は1日8,300万ガロン(約3億ℓ)にもなる。この計画を進めるにあたりピュア・ウォーター・サンディエゴは、米環境保護庁(EPA)から融資を受けているほか、連邦政府と州政府からの補助金を得ているという。

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