台湾、五輪開会式を事実上ボイコット 競技は出場

台湾の蔡英文総統(総統府提供・共同)
台湾の蔡英文総統(総統府提供・共同)

【台北=矢板明夫】台湾教育部(教育省に相当)は新型コロナウイルス感染対策を理由に、2月4日に開幕する北京冬季五輪をめぐって、開会式と閉会式には選手団を参加させない方針を決めた。中国が一方的に打ち出した台湾選手団の漢字表記「中国台北」への不満が背景にある。事実上の開会式と閉会式のボイコットとの見方もある。選手は予定通り競技出場する。

問題になったのは、台湾代表の漢字による表記。国際オリンピック委員会(IOC)では、台湾の名義を英語による表記で「チャイニーズ・タイペイ」としている。漢字の表示はこれまで「中華台北」とされ、昨年の東京五輪などでも踏襲された。だが中国は主催国として「台湾は中国の一部だ」とする一方的な主張から漢字表記を変更した。

IOC正式メンバーの台湾は従来、中国側との摩擦は避けるため、「チャイニーズ・タイペイ」「中華台北」との呼称を受け入れつつ選手団は派遣するとの現実的対応をとってきた。

だが「チャイニーズ・タイペイ」の漢字表記を「中国台北」にされると、中国が主権を握る香港の呼称である「中国香港」と横並びになってしまう。「中国の一部である台湾」と受け止められかねないからだ。

さらに、開会式と閉会式に出席すれば、台湾選手団が「中国台北」と書かれたプラカードを持って行進しなければならない。中国がこれを政治宣伝に利用することを、台湾当局は強く警戒しているとみられる。

2008年の北京夏季五輪の際は、対中融和策を進めていた中国国民党が台湾で政権与党だった。当時は関係が比較的良好で、中国側は「中華台北」の呼称を認めた経緯がある。しかし今回は、中国とは距離を置く民主進歩党が政権与党であり、中国当局は呼称問題で譲らなかったようだ。

台湾大手紙のスポーツ担当記者によると、北京冬季五輪への台湾選手団は計15人。その大半は開会式後に北京入りし、閉会式よりも前に北京を出る日程。新型コロナの感染リスク低減が主な理由となっている。

北京冬季五輪の参加をめぐっては、野党の時代力量を中心に、台湾当局にボイコットを含む厳しい対応を求める決議案が昨年秋に出され、28日に可決されるなど反発が渦巻いていた。

決議案作成にかかわった台湾の人権活動家、楊憲宏氏は取材に対し、「中国は台湾を矮小(わいしょう)化するためスポーツを政治利用し、さまざまな工作をしてきた。五輪期間中、台湾選手に『台湾は中国の一部』と強引に言わせるなど、嫌がらせする恐れもある」と話した。

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