動植物や微生物が自然界で生き残る戦略の基本は分布域の拡大で、植物がおいしい実をつけて鳥に種子を運ばせたり、ウイルスが変異を繰り返して感染力を高めたりすることがよく知られている。だが、北海道大の研究チームは最近、植物ウイルスに寄生する微小なRNA(リボ核酸)分子の驚くべき戦略を世界で初めて発見した。アブラムシをおびき寄せて遺伝子を勝手に操作。無理やり羽を生やし、まるでプライベートジェット機に乗ったように遠くへ移動し、分布を拡大しているという。
タバコの葉が真っ黄色に
このRNA分子は「Y-sat」と呼ばれ、昭和55年に四国地方で、タバコに感染する植物ウイルスに寄生しているのが発見された。塩基という物質が鎖状に369個つながった比較的小さな分子で、タンパク質合成や遺伝に関わる情報は持たないが、植物の生命現象を調節する生理活性に関与し、まるで病原体のように振る舞う。これが、ウイルスが持っているタンパク質合成の情報などを伝える数本のRNAに混じって存在していた。