電子機器進化に対策追いつかず 後絶たぬカンニング

大学入学共通テストの問題が流出した問題で、関与したとみられる受験生の女性(19)はスマートフォンを上着の袖に隠して試験問題を撮影したと供述している。手口はいたって単純だが、外部と通信ができる電子機器を使った試験中のカンニング行為は過去にも起きており、有効な対策がないのが現状だ。

大学入試センターなどによると、共通テストでは試験会場へのスマホの持ち込みが可能だが、電源を切って持参したバッグなどに入れる必要があり、使用すると失格となる。

今回、女性は上着にスマホを隠していたが、試験会場内では上着の着用は禁止されておらず、新型コロナウイルス感染対策で窓を開けた換気が行われているため、防寒対策として上着を持ってくることが呼びかけられていた。

電子機器によるカンニング行為をめぐっては、平成23年に行われた京都大の2次試験でも発覚。仙台市の男子予備校生が携帯電話で問題をインターネット掲示板に投稿し解答を依頼したとして、京都府警が偽計業務妨害容疑で逮捕した。

神戸大の森井昌克教授(情報通信工学)によると、この事件以降、試験会場での電子機器の利用は一層厳しくなったという。

だが、スマホなどの新しい電子機器の登場や性能の向上などで手口は巧妙化している。今回、関与したとみられる女性はシャッター音を警戒し、動画で問題用紙を撮影するなどしたため、試験中に不正行為が気付かれることはなかった。今回は他にも試験中にスマホを太ももに挟んでいた受験生1人が失格になった。

海外でも電子機器を使った試験のカンニングは問題となっている。韓国では2004年、日本の共通テストに当たる「大学修学能力試験」で、受験生による携帯電話を使った大規模カンニング事件が起こった。

受験生は携帯電話メールで外部と連絡をとって答えを教えてもらっていた。韓国では翌年から試験会場への電子機器の持ち込みが全面的に禁止となった。

一方で、携帯電話やスマホを取り締まっても、眼鏡型のウエアラブル端末やペン型のカメラなど、隠れて撮影できる電子機器は多い。森井氏は、電波遮断装置を設置した場合には周辺の施設などにも影響を及ぼす可能性があるといい、「会場の入り口で受験生からスマホを預かる以上の対策は難しい」とする。

その上で「紙に解答を書き込むという試験の形式は変わらないが、社会や技術の進化は著しい」と指摘し、学生側が試験での不正行為を行わないよう意識を向上させる必要があるとした。

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