《古巣である宝塚歌劇団との関わりは、今も深い。平成26年4月、宝塚創立100周年の記念イベント「時を奏でるスミレの花たち」(兵庫・宝塚大劇場)で司会を務めた。さらに昨年、宝塚の花組、月組誕生100周年を記念するOG公演にも出演した》
8年前は胸元に「100」の金文字が輝く黒いドレスを新調して、臨みました。八千草薫さんや鳳蘭さん、大地真央さんらきら星のごとくOGのスターさんたちが結集され、そのオーラがまぶしくて、舞台そのものがパワースポットのようでした。
私は、こういう節目というものを大切にしたい、と思っています。劇団、そしてお客さまに育てていただいた感謝からです。節目だからこそ、「この時しか会えない」お顔触れがあります。私は、この公演に備え、ご出演される先輩お一人お一人と、何を本番で話すか、打ち合わせも兼ねて、事前にインタビューさせていただきました。
恐らく60人くらいの方とお話ししたと思いますが、8年たった今、八千草さんや真帆志ぶきさん、順みつきさん、峰さを理さんは亡くなられました。まだお若いのに、早すぎる訃報もあり、驚きました。先輩方に貴重なお話を聞かせていただいたと、深く感謝しています。
本番でユニークだったのは、トークの締めくくりで真帆さんが「次は、150周年でお会いしましょう!」っておっしゃったこと。舞台上の元トップ約30人が一瞬、長寿ならギリギリ生きているかな?みたいな微妙な表情になりました(笑)。でもコーラスで入った後ろの10代20代の下級生は、かわいい笑みで真っすぐ、この言葉を捉えている。そんなジワジワくるユーモアの中、こうして伝統が継承されていく宝塚って、本当にいいなあと思いました。
私は、宝塚音楽学校時代を含めると、宝塚で20年を過ごしました。第二の故郷であり、家族のような存在です。宝塚に入っていなかったら、何の挑戦もない、平々凡々な人生を送っていたと思います。虚構の芸術でありながら、多くの人の〝明日の糧〟になって、100年以上、愛され続けてきた。私はその歴史の5分の1程度、お邪魔しただけですが、多感な10代から30代頭まで、宝塚で過ごせた経験が、今につながっています。まさに宝です。
《昨年は花組、月組誕生100周年を記念するOG公演「Greatest Moment」(大阪・梅田芸術劇場など)に出演。現役時代を上回る男役の美学を見せ、ファンを喜ばせた》
本当に不思議ですが、昔、一度出演したシーンって、本当に昨日のことのように、体が覚えているんですね。(元花組トップスターの)安寿(あんじゅ)ミラさんと向かい合わせに場面をやっていると、「今、何時代?」って錯覚するほど、宝塚時代にスパッと戻っていく。でも舞台袖の鏡を見ると、魔法が解けたように「いやいや、それなりに年月たっていた」と現実に戻る(笑)。
私は出演にあたり、出ると決めたらファンの皆さんを失望させたくない。そして、宝塚の舞台を初めて見る方も置いてきぼりにせず、絶対に楽しんでいただきたい、と思って今回、臨みました。それは現役時代と同じですね。
《OG公演には初風諄(はつかぜ・じゅん)さんや榛名由梨さん、安奈淳さん、高汐巴(たかしお・ともえ)さんらスターが勢ぞろいする豪華な舞台となった》
節目だから実現した、夢の競演だったと思います。各時代を代表するトップスターが一堂に会するのは、OG公演の醍醐味(だいごみ)。時を経て、それぞれの経験が生き、熟成された「大人の宝塚」でした。(聞き手 飯塚友子)