群馬県高崎市は障害者の就労の場として直営のメロン水耕栽培施設を整備する。農業と福祉をつなげる「農福連携」の新たな試みとして取り組むもので、将来に不安を抱える障害者やその家族の支援を図る。豊かな自然が広がる同市倉渕地域に令和6年度中の開設を目指す。
障害者総合支援法に基づき、雇用契約を結んで働くことが困難な人が軽作業などの就労訓練を行うことができる就労継続支援B型サービスの事業所として運営される。令和元年時点で、全国には1万2497事業所があり農作業のほかパン製造やクリーニング、部品加工などさまざまな作業を行っている。
同市がメロンの水耕栽培に目をつけたのは、市内で同種の栽培が行われておらず、作業に重機などは不要で利用する障害者の負担が少ないため。高い価格のメロンの出荷は障害者に支払われる賃金増にもつながる点も考慮された。
施設は1棟約330平方メートルのビニールハウス3棟と事務所兼出荷作業室。養液が中央から放射線状に対流するため生育に理想的な環境を作り出す「町田式水耕栽培槽」を導入、ハウス1棟に16槽の設置を予定している。全体の事業費は確定していないが、水耕栽培槽だけで億単位になる見込みで、「整備費は大きく、民間ができないところを市がやるという面もある」という。
受け入れる障害者は1日最大20人。育苗や収穫、出荷などの作業は月~金曜日の週5日。障害者の作業日数は障害の特性や状況に応じて決定されるため、登録人数は20人を超える見通し。スタッフは職業指導員や生活支援員など5人で、障害者の全員の自宅送迎を行こともアピールポイントだ。同市では「高齢化した親が障害者の子の将来に持つ不安の軽減につながれば」としている。