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もうすぐキャンプ、そしてスーパーボウル 花木聡

山本由伸投手(左)とともに最優秀バッテリー賞を受賞した若月健矢捕手(右)。今季はNFL仕込みのリードを見せてくれるかも(撮影・土谷創造)
山本由伸投手(左)とともに最優秀バッテリー賞を受賞した若月健矢捕手(右)。今季はNFL仕込みのリードを見せてくれるかも(撮影・土谷創造)

つかの間のオフ。野球がないこの期間、私の一番の楽しみはNFL、アメリカのプロフットボールリーグである。NFLは現在、プレーオフの真っただ中。今週末には2つのカンファレンスそれぞれのチャンピオンシップゲームが行われる。そして、勝利した2チームが2月に開催されるスーパーボウルへと駒を進める。

同じアメリカ生まれのスポーツだけあって、野球とフットボールには共通点も多い。例えば、攻守がはっきりと分かれていること。攻撃側の選手と守備側の選手は役割が全く違う。しかもメンバーまで入れ替わるから、全員がDH制の野球だと思えばいい。ルールが少し難しそうに見えるかもしれないが、案外、野球ファンにとってはとっつきやすいスポーツである。

野球選手の中にも、多くはないが、フットボールファンはいる。昨年の12月、日本の大学ナンバーワンを決定する甲子園ボウルを若月健矢選手と一緒に観戦した。子供の頃の愛読書がフットボール漫画の名作『アイシールド21』だったというから、まあまあの筋金入りだ。母校、埼玉・花咲徳栄(はなさきとくはる)高校にアメリカンフットボール部があったこともあり、若月選手にとってフットボールは身近なスポーツだったそうだ。2019年のキャンプでは「オリックス若月がNFLブレイディら研究し強肩に」という見出しとともに、スローイングの練習にNFLの選手の動きを取り入れていることが報じられた。フットボールはセットプレーの連続で試合が構成される。一つひとつのプレーは、状況や予想される相手の作戦、組み立てや選手の調子、いろいろな要素を加味して決定される。「野球は素人だけど、ピッチャーの配球とよく似てないか?」。そう聞くと、グラウンド上のプレーを目で追いながら、若月選手は歯切れよく答えた。「うん。駆け引きですね!」。もしかしたら今シーズン、若月選手はNFL仕込みのリードを見せてくれるかもしれない。

毎年のことだが、スーパーボウルは春季キャンプ期間中に行われる。録画をセットし、キャンプ帯同期間はフットボール関連の情報をすべてシャットアウト。帰宅してからまっさらな状態でスーパーボウルを見るのがルーチンだった。2014年、その年も首尾よく結果を知らぬまま最終日を迎えていた。昼食のときだった。通訳担当者がまったく悪気なくしゃべりかけてきた。「シアトル・シーホークスって初優勝ですか?」。そういえば、留学経験がある彼とはフットボールの話をしたことがあった。最後の最後に彼を昼食に誘うとは、なんと軽率なことをしてしまったのか。「シーホークスが勝ったとしたら…初優勝だね」。そう力なく答えるのが精いっぱいだった。様子を隣の席で見ていたディクソン投手は「不幸な出来事だったね」と半笑いで慰めてくれた。今年のスーパーボウルは2月13日(日本時間14日)である。そのときキャンプに帯同しているかどうかは未定だが、一応、記憶にとどめておいていただけるとありがたい。

はなき・さとし 1963年3月29日、神戸市生まれ。90年オリックス・ブレーブス(現・オリックス野球クラブ)入社。スカイマークスタジアム(現ほっともっとフィールド神戸)球場長などを経て、2012年広報部へ。現在はプロジェクトマネジャーとして事業本部、ファーム事業グループ兼務。1995、96年の優勝を知る数少ない現役職員。関学大アメフト部OB。プライベートでは兵庫・仁川学院高アメフト部のヘッドコーチを務める。

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