主張

ASEANの迷走 強権支配の容認に傾くな

国軍がクーデターで権力を握ったミャンマーへの対応が分かれ、東南アジア諸国連合(ASEAN)が外相会議の延期を余儀なくされた。

カンボジアのフン・セン首相が年明け早々、ミャンマーを訪れ、国軍トップのミンアウンフライン総司令官と会談するなど、国軍支配の容認をアピールしたことに、マレーシアなどが反発し、混乱した。

ミャンマーのクーデターでは事態収拾にASEANの力量が問われている。だが、年初の外相会議が開けず、その理由の説明もできないとは、大失態である。

問題なのは、フン・セン氏の独断的な行動だ。カンボジアは今年、持ち回りのASEAN議長国であり、議長国首脳として、調停に乗り出したのだろう。

そもそも、強権統治で知られ、37年間、権力の座にあるフン・セン氏が、調停役としてふさわしいかどうか、甚だ疑問である。

昨年10月の首脳会議で、ASEANはミンアウンフライン氏の出席を認めなかったが、フン・セン氏との面会はどう見ても首脳会談といえ、民主体制の指導者だったアウンサンスーチー氏との会談はなかった。

フン・セン氏は国民の支持を集めた最大野党を解党に追い込み、前回2018年下院選では、自身の人民党が全議席を独占した。昨年暮れには、長男を後継首相とすることを公言している。

フン・セン氏の独裁者としての自信の背後に、中国の存在があることは間違いない。

ASEAN各国が、対立する米中双方と微妙な距離感を保とうと腐心する中、カンボジアは絶対的な「親中国」を貫き、中国の大きな支援に浴してきた。

前回議長国だった12年のことだ。7月のASEAN外相会議で、南シナ海問題をめぐって中国擁護に徹し、フィリピンやベトナムなどと対立し、共同声明を発表できない事態を招いた。

かつて「民主主義の優等生」といわれたタイでは、14年のクーデターを主導したプラユット氏の政権が継続している。ASEAN全体が強権に傾かないか心配だ。

なし崩し的な国軍支配は認められない。あくまで、民主体制への復帰を目指すべきだ。暴力はやまず、経済は縮小して、人道危機は深刻化している。これ以上の迷走は許されない。

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