通崎好みつれづれ

代官山教会の響き

共演した青柳いづみこさん(左)と通崎睦美さん。青柳さんは1914年ニューヨーク製スタインウェイのピアノを演奏した=東京都渋谷区の代官山教会
共演した青柳いづみこさん(左)と通崎睦美さん。青柳さんは1914年ニューヨーク製スタインウェイのピアノを演奏した=東京都渋谷区の代官山教会

先週末、日本基督教団代官山教会(東京都渋谷区)で開催された「青柳いづみこ インヴェンションを弾く」にゲストで出演した。

青柳いづみこさんは、大阪音楽大学名誉教授を務める高名なピアニストであると同時に、文筆家としても高い評価を得ている。青柳さんが扱うテーマは多岐にわたるが、とりわけ<弾き手>の目線でつづられる音楽に関する著書には定評がある。例えば、『ショパンコンクール 最高峰の舞台を読み解く』(中公新書、2016)は、年を経てなお版を重ねる。

さて、今回のコンサート。準備をしていると、教会の牧師・今村正夫さんが「関西の方ですか」とおっしゃる。福島県ご出身の今村さんだが、大学は京都の同志社大学神学部に通われたとのこと。私も同志社中学校出身なので、思いがけず話が盛り上がった。

おしゃれな街、代官山の地に建つこの教会は、大正6年、麻布で「城南教会」として設立。昭和4年に代官山に移転、会堂が建設された。しかし、老築化と耐震問題により解体され、平成25年、旧会堂から50メートルほどのところに新築された。今村さんは「同志社のような煉瓦(れんが)造りにしたかったのですが」とおっしゃるが、煉瓦色のシンプルな壁面に「DAIKAN YAMA」と横書き、その下に大きく縦に「CHURCH」と書かれた外観は、ドイツのバウハウスの建築物のようで、とても格好がいい。

ドイツ・バウハウスの建築物を思わせる代官山教会の外観=東京都渋谷区
ドイツ・バウハウスの建築物を思わせる代官山教会の外観=東京都渋谷区

この教会の特徴は、音楽会開催を想定して設計されていること。しかも、1914(大正3)年ニューヨーク製スタインウェイのピアノが入っている。ヴィンテージ楽器の特色を心得て弾きこなす数少ないピアニストである青柳さん。そのタッチに応えて生まれる音色は、格別のものだった。

会衆派(プロテスタント系)の教会は、他宗派と比べシンプルな造りが多い。なぜなら、名の通り会衆(礼拝者)に重きを置くからだ。十分な換気、客席数制限の中開催されたコンサート。オミクロン株が猛威を振るう中、足を運んでくださったお客さまを前に、改めて一つの目的を持って「集う」ということの重みを感じるコンサートとなった。(通崎睦美 木琴奏者)


通崎睦美さん(中川忠明さん撮影)
通崎睦美さん(中川忠明さん撮影)

つうざき・むつみ 昭和42年、京都市生まれ。京都市立芸術大学大学院修了。マリンバとさまざまな楽器、オーケストラとの共演など多様な形態で演奏活動を行う一方、米国でも活躍した木琴奏者、平岡養一との縁をきっかけに木琴の復権に力を注いでいる。執筆活動も手掛け、『木琴デイズ 平岡養一「天衣無縫の音楽人生」』で第36回サントリー学芸賞(社会・風俗部門)と第24回吉田秀和賞をダブル受賞。アンティーク着物コレクターとしても知られる。

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