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(217)最適な透析開始の時期とは

糖尿病患者さんの診療を長年やっていると、腎不全の悪化を止められず人工透析を始めなければならない場面に遭遇しますが、透析は絶対に受けたくないと強い拒否感を持つ人もいます。

糖尿病で通院している70代後半の男性患者さんは、腎機能が低下し、本来の機能の10分の1程度まで下がってしまいました。いつか人工透析が必要になるということは話していたのですが、受けたくないと言っていました。しかし、腎不全によるむくみや食欲の低下が出てきて、考えも変わったようです。ご自身でも調べられ、話し合った結果、拒否感も和らぎ、いつでも始められるように準備を進めることにしました。

腎機能が大幅に低下すると心不全やむくみ、倦怠(けんたい)感、貧血といったことが起こるようになります。放置すればもちろん長くは生きられず、何も手当てをしなければ相当つらい日々を過ごすことになります。その状況を改善する手段が人工透析です。透析は通常1回4時間前後、週3回受けることになります。血液を体外に抜き出し、機械にかけて浄化し、再び体に戻すという治療を行います。

どのくらいまで腎機能が低下したら透析を始めなければならないのかということは以前から議論のあるところです。このことについて調べた研究結果が医学誌に報告されています。スウェーデンで行われたもので、平均73歳の腎不全患者1万人を観察し、透析開始時の腎機能(eGFR=推算糸球体濾過(ろか)量)と、その後の死亡率、心血管病発症率の関係を調べています。

eGFRは血液検査から推定される腎機能の指標で、90以上が正常とされ、低いほど腎機能が悪いと考えます。結果は透析開始時のeGFRが6よりも15の方が5年間での死亡が5・1%、心血管病が2・9%低くなっていました。言い換えると1・6カ月寿命が延びるためには、4年早く透析を始めなければならないということになります。開始が早いほどよいのか、断言しづらい結果です。

透析を始める判断はほとんどの場合、医師が行いますが、生活や症状が変わるのは患者本人です。自分の希望は必ず伝え、自身が中心となって判断が行われるものであることと知っておいてください。そのためにも拒否感を持つだけではなく、自身の病気や治療についてよく知ろうとすることはとても大切なことだと思います。 (しもじま内科クリニック院長 下島和弥)

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