岸田文雄内閣の目玉政策・経済安全保障の象徴として経済安保推進法(仮称)が今国会に提出される。この法案の内容はすでに報道されているので、本欄では割愛するが、あくまで新法になじむものを集めたもので、経済安保政策の全体像ではない。そのうえで積み残された課題を指摘したい。
電力コストも供給網の壁に
まず柱の一つである供給網の強靱(きょうじん)化。国が重要物資を指定して、企業の国内生産基盤の投資を財政支援する。これは先端半導体について今年度補正予算で6000億円を計上した仕組みをモデルとする。ポイントは重要物資をどう絞り込むかだ。基準を明確にして安易に支援が広がることへの歯止めは当然必要だが、その際、大事なのは、米欧中が巨額資金で「戦略産業の囲い込み」をしている現実だ。手をこまねいていれば、日本の産業がその磁力に引き寄せられて国内が空洞化しかねない。