野球がぜんぶ教えてくれた 田尾安志

結果を気にせず勝負に挑む

同大時代の田尾安志さん。日米大学野球の日本代表に選ばれるなど、大学でのの活躍がプロ入りに結びついた
同大時代の田尾安志さん。日米大学野球の日本代表に選ばれるなど、大学でのの活躍がプロ入りに結びついた

受験シーズンの真っただ中。高校や大学の入学試験を間近に控え、人生の岐路に立つ思いでいる受験生も大勢いるだろう。

僕にもそんな頃があった。学費が高い野球の強豪の私学ではなく、大阪の府立高に進学。親からは高校卒業後は就職して働いてほしいといわれていたが、僕は大学への進学を希望した。社会に出て何をやりたいかを見つけるための期間をもらいたかったからだ。

現役で合格できなければ浪人してでもいいと覚悟を決め、受験勉強に取り組んだ。野球の練習で体が疲れているため、夕食と風呂の後はすぐ就寝。自然と夜中の2時や3時に目覚め、そこから勉強を始めると頭もすっきりして集中できた。早朝に放送されていたラジオ講座も学習に活用。そうしたやり方が自分に合っていたようで、幸運にも同大に合格できた。

家計にそれほど余裕はなかったので、もし入学金や授業料を払えないのであれば、知り合いのつてで「スポンサー」になってくれる人を探すしかないと考えていたのだが、父が田舎に持っていたわずかな土地を売って工面してくれた。当時はプロ野球選手を目指そうなどとは思ってもみなかったが、大学で野球を続けられたことが現在の自分につながったと思う。

若い人にとっては受験の合否で人生のすべてが決まるように感じてしまうかもしれないが、そうではない。大事なのは、どのような結果になっても前向きに受け止めて次に進めるかどうかだ。「人間(じんかん)到る処青山(せいざん)あり」。この世の中、どこにでも骨を埋められる場所はある。あらかじめ決められた道を歩むのが人生ではない。枠からはみ出さないようにと恐る恐る生活している人も多いが、失敗したらどうしようと悪い方にしか考えられず、行動できないままでは楽しくない。

僕は2005年に創設1年目の楽天の監督をやらせていただいた。戦力面からも最下位は免れず、監督としての評価も当然落ちる。そんなことは初めから分かっていたが、やってみたらあれほど楽しく、いい経験ができた一年はなかった。もしも、それを「最下位で恥ずかしい思いをした」としか思えないのなら、それは寂しい生き方だと思う。

これから入試本番を迎える受験生たちには、結果を気にせず思い切って勝負に挑んでほしい。 (野球評論家)

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